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Yazawa Ventures 矢澤麻里子(撮影=小田駿一)

上下関係、ジェンダー、社内外の枠組みなどに縛られずに、チームや組織、あるいは業界に多くの実りをもたらした女性たちは、何を考え、どう行動したのか。

Forbes JAPANでは、これまでの考え方や既存のシステムを超えて活躍する女性にフォーカスした企画「Beyond Systems」を始動。約3カ月にわたり、翻訳コンテンツを含めたインタビュー記事を連載していく。

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2020年11月、矢澤麻里子はシード期のスタートアップに特化したファンド「Yazawa Ventures」を組成した。国内にはそもそも女性のファンドマネージャーが少ないが、1人でファンドを立ち上げた女性ベンチャーキャピタリストは日本初となる。

ソフトウェアベンダーでコンサルタント兼エンジニアとしてキャリアをスタートさせた矢澤は、その後、サムライインキュベートに転じ、スタートアップ・アクセラレータ「Plug and Play Japan」の立ち上げ期にはCOOとしてその成長に貢献した。

2歳の娘の子育てに日々翻弄されながら、「働く」ことに一直線に挑む矢澤。彼女にとって「働く」ことは特別な意味を持つ。「ファンドによって、働く人を支援する企業をサポートしたい。それは誰に頼まれたことでもなく私がやりたいこと」。そう語る、矢澤の原動力とは。

「女性は働くべきではない」


スタートアップ系の独立VCを運営する矢澤は、「壁だらけの人生だった」と話す。言語の壁、就職の壁、投資業界の壁、子育てをしながら起業する壁。「働きたい」、その想いを抱いたときから矢澤は数え切れないほどの壁を乗り越えてきた。

「壁にぶつかったとき、できない理由を探すことは容易いです。でもそこから逃げたら、自分の中でやらなかった、挑戦しなかったという経験が積み重なってしまうと思います」

紙問屋の娘として生まれた矢澤は、子どものときから相反する価値観の中で生きてきた。人生で最も大きな壁は、幼い頃に父親に言われた「女性は働くべきではない」という言葉だったという。

父親は得意先のことを第一に考え、地域からも愛される経営者だった。1枚10銭、20銭単位で紙を卸し、顧客の喜ぶ姿を自らの喜びとしていた。会社によく顔を出していた矢澤は、そんな働く父親の姿が誇らしかったという。

「お客さまのために働く父はとても楽しそうでした。その様子を見て、周りの人を幸せにする仕事っていいな、と思っていたんです」

ところが、矢澤自身は「家事さえできれば外で働かなくていい」と言われて育った。にもかかわらず家族や教師からは「何になりたいの?」と聞かれる。専業主婦以外の選択肢がないのだから、いまいち腑に落ちない。花屋、ケーキ屋、父親の営む紙屋にも憧れたが、いずれも「働くこと」が前提だった。

次第に、将来働いてはならないのになぜ学ばねばならないのかという疑問が拭えなくなり、学校へ行く意味がわからなくなっていった。

「勉強って本来とても面白いことなのに、私にとってはなんだか虚しいことになってしまいました」

しかし、矢澤はその壁を強い想いと好奇心で乗り越えていった。高校時代に小遣いを貯め、父を説得して挑んだイギリスでの短期ホームステイ。そこでグローバルな目線を養い「英語をもっと学びたい」とニューヨークの大学へ進み、「人を幸せにする仕事をしたい」とアメリカで事業を立ち上げ。「世の中にもっと価値を提供したい」「自分が投資することで、人を幸せにしたいと思っている人を応援したい」と、まだそれほど就職の道が開けていなかったベンチャーキャピタルの世界へと進んでいった。

文=石川香苗子 写真=小田駿一 編集=松崎美和子

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