世界経済を襲う「日本化」、脱する道はあるか

ラリー・サマーズ / Getty Images


問題は、政府が「オートパイロット」状態に慣れっこになった結果、経済の点検の仕方をほとんど忘れてしまったことだ。また、立法プロセスはさびつき、国民の反応は遅く、うつろいがちで、あまりにも後ろ向きになってしまった。

さらに、収穫逓減という問題もある。たとえばFRBは、2008年から09年にかけてのサブプライム危機以来、政策金利をゼロないしその近くに維持してきた。だが、ある時点で、その流動性は、金融経済学の分野で「ひもを押す」と表現されるように、効果がなくなってしまった。

これと、サマーズが2000年ごろ、東京に警告を発していた難しい状況はそう離れていない。現在の彼はこうも言っている。「わたしたちは、金利の可変幅が以前よりもはるかに狭まっている世界にいるのだろう。今後、金融政策が非常に強力な安定化手段になるとは考えにくい」

日本化、まさにそのとおり。もし東京がこの20年あまりの間に過去の失敗を胸に刻み、より生産的な方法を考え出してくれていれば、筆者もちょっとは慰められていただろう。しかし、そんな方法は出てこなかった。2012年から20年の間に、日本の偉大な改革者と思われていた安倍晋三は、日銀の積極的な金融緩和をさらに拡大させた。安倍の支持を受ける新たな首相である岸田文雄も、これまでと代わりばえのしない施策に訴えようとしている。

日本化を克服する方法を日本が見いだせていないとすれば、機能不全に陥り、党派性の強い米国政府にはどんな期待がもてるだろうか、あまり期待できないのではないかというのがサマーズの見方である。それに反対するのは難しい。

編集=江戸伸禎

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