起業、投資、ビジネススクール。シャラポワはなぜ転身に成功したのか

マリア・シャラポワ / 写真=セレステ・スローマン


──あなたにとって、自力で財を成すことはどんな意味をもっていますか。

これは、私にとって重要な概念です。現役時代にいかに努力してきたかを象徴するだけではなく、私の両親や身近な人々が長年にわたりどれほど多くを犠牲にしてきたかをも内包しているからです。それは、私が6歳のときに父とフロリダ州に来て、母と離れて過ごした時間だけではありません。トレーニングに集中するために見送るしかなかった祝日や、そのほか多くの大切な出来事。両親以外にもたくさんの方々が私を信じ、私の利益になるように、リスクをとってくださった。それは、私の代理人であり、スポンサー契約を結んでくださったすべてのブランドの代表の方々です。

──引退後も、ナイキ、エビアン、ポルシェといったブランドとのスポンサー契約を維持されていますね。スポンサーとの関係は変化しましたか。

素晴らしいブランドと提携するチャンスをいただいたことは、現役時代に築き上げた関係が特別で揺るぎないものであることを裏付けています。私は、最初からどのブランドとの関係も普通のスポンサー契約以上のものになってほしいと思っていました。単なるブランドの顔ではなく、真のパートナーになりたかったのです。それぞれの広告キャンペーンのために、戦略的でクリエイティブなソリューションを考えるお手伝いをするのが好きでした。キャリアの新しい段階に、ナイキ、エビアン、ポルシェのようなブランドと新しい提携の方法を模索できることにワクワクしています。

──自伝『アンストッパブル』には、アスリートのキャリアを通じて得た自身の強みは、100%の集中力、持久力、対戦相手に対する感情をスイッチオフできることだと書かれています。これらの強みは現在も役立っていますか。

起業家としての思考は、多くの点でスポーツのおかげで発達させることができたと、これまでも何度もお話してきました。粘り強く働くことや、一貫性をもつこと、細部に注意を払うことは、スポーツでも、ビジネスでも実践しています。

現在、シャラポワはビジネスに専念している。彼女は現役時代の12年、大型キャンディショップ「イッツシュガー」の創始者であるジェフ・ルービンとともに高級スイーツブランド「シュガポワ」を設立。前述の活動停止期間中には、本格的にビジネスを勉強するため、ハーバードビジネススクールのコースを一般受講者とともに学んだ。ナイキやプロバスケットボールのNBAでインターンとして働き、マネジメントを学んだ経験もある。彼女は、戦略的に自身の価値を高め続けてきたのだ。いまでは、シュガポワは世界32カ国で販売されている。会社の売り上げは創業時から毎年数十%伸びているという。


「シュガポワ」は32カ国でブランド展開され、最近は中東にも進出した。

ほかにも、シャラポワは、スタートアップ企業へ順調に投資しており、最近では、建築プロジェクトに携わることも計画している。また、昨年12月、イギリス人の実業家で、同国の王室ともつながりをもち、芸術にも造詣が深いアレクサンダー・ギルケスとの婚約を発表した。
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文=ユリア・ワルシャフスカヤ 写真=セレステ・スローマン 翻訳=石橋むつみ

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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