首都圏で言えば船橋や港北にあり、休日に1日かけて出かける場所としても知られている。併設されているレストランもメニューが充実しており、スウェーデンビールなど楽しみながら、ゆったり滞在できる。
筆者も何度か出かけているが、家族が家具を見ている間はレストランに陣取って、読書やPC作業で時間を過ごしている。似た状況と思われる人たちが、同じように読書や仕事をしているところに、よく遭遇した。
とはいえ、それなりに長く時間を取られることもあり、イケアを訪れる頻度はそれほど高くはない。そんな事情を考慮してか、最近は都心の原宿や渋谷、新宿にも店舗を構えているようだが、郊外の既存店に比べるとかなり狭めのようだ。
ホットドッグなら「5分」で買える
世界的に見ても、イケア店舗の大部分は、街の中心からは少し離れたところにあるという。それはイケアの特徴でもありながら、来店客数という点で考えると、弱みの1つでもあった。
そこでドバイのイケアが行ったのが、この企画だ。既存のグーグルマップのタイムラインという機能を活用することで、イケア来店までにかかった時間を積算し、それを「時間通貨」として買い物で支払えるようにしたのだ。この企画は、世界の広告界やマーケティング界で飛びぬけて大きな影響力を持つカンヌライオンズ2020~2021のダイレクト部門でゴールドを受賞した。
時間通貨の1分当たりの換算比率は、ドバイ市民の平均年収から割り出したという。コーヒーテーブルが「3時間34分」、小物入れなら「39分」など、積算された時間通貨で購入できる。
イケアの近所に住んでいて、移動時間があまりかからないという人でも、ホットドッグなら「5分」で買うことが可能だ。日本ではホットドッグがだいたい100円なので、そこから割り出すと、「60分」なら1200円相当となるだろうか。
対象商品の値札には、普通の価格と、購入に必要な時間の両方が記入されている。例えば、簡易的な本棚が「1時間55分」=約2300円、1人掛けの椅子は「8時間31分」=約1万220円相当だ。
購入する客は、グーグルマップのタイムラインをレジで見せれば、時間通貨が使える。現金やカード払いとの併用も可能で、時間分の割引が受けられる。海外ではよくレジで「キャッシュor(クレジット)カード?」と尋ねられるが、ドバイのイケアでは、「キャッシュorカードorユアタイム?」と尋ねられていて、なかなか面白い。
この企画は、多くのメディアやネット上で取り上げられ話題となり、ドバイでの来店客数はそれまでの1日当たり目標人数の32%増を記録した。もともとこの企画は、ドバイでの2号店オープンにあたってのプロモーションとして行われたものだったが、1号店に来てくれていた上得意顧客にも報いたいとの考えから、両店で実施されたという。