ビジネス

2021.11.16

古き発想を捨て「チームで勝つ」を証明


もちろん独裁的な指示では人は動かない。江川がコンサルタントとして意識してきたのはチーム戦だ。

前身のアンダーセン・コンサルティングに入社したのは1989年。当時の事業はシステムコンサルティングのみで、文系だった江川は必死にプログラミングを勉強した。

3年後、戦略コンサルティング部門に異動。こんどはトップダウン型の戦略思考を習得するのに苦しんだ。開花したのは、著名コンサルタント、バーバラ・ミントの『ミント・ピラミッド・プリンシプル』を読んでから。物事をピラミッド構造でとらえる思考法を身につけ、「案件を3つ4つかけもちできるようになった」。

しかし、上には上がいる。30歳目前、海外案件で仕事をしたタイやマレーシアの同僚たちは、頭脳明晰で英語はネイティブ並み。「一対一ではかなわない」とうなだれた。

一方で「チームなら勝てる」と気づく。ミント・ピラミッドの思考をメンバーにも教え、チームのパフォーマンスは向上。以来、「自分ひとりでできると思うな」が口癖になった。いまもチーム戦は重要なテーマだ。社長就任後、サイロ型に陥りがちな産業別・機能別のマトリックス組織を日本市場での最適化を目指しガバナンスを強化。組織の枠を超えたコラボレーションを促すジャパンモデルはグローバルCEOジュリー・スウィートの目に留まり、グローバルでも同様の組織モデルが導入された。

江川はアクセンチュアを「コンサルタントという言葉はもうそぐわない。仕組みをつくり、運営して、結果を出すところまでやるという意味ではサービスカンパニー」と位置づける。

「我々はDXで第一人者になれましたが、次のビッグウェーブはわからない。多様な人材を採用、教育して準備しなければならない。それがサービスカンパニーのあるべき姿」

現在、女性社員比率は36%。国内の新卒採用では、ついに女性が半数を超えた。美大からの採用も増えている。

一般的に規模が拡大して、かつ多様性が増せば、集団としてのまとまりは失われていく。この難題を乗り越える新しいチーム像をどうやってつくりあげていくのか。江川の挑戦は続く。


えがわ・あつし◎慶應義塾大学卒業後、1989年、現アクセンチュアに入社。製造・流通本部統括本部長を経て、2014年に取締役副社長。15年9月より現職。また20年3月には日本市場の責任者としてグローバル経営委員会に参画。日本法人の改革が評価された。

文=村上 敬 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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