彼がその日発表した車両は、ロータス・エリーゼのシャシーに、7000個の小型リチウムイオン電池を詰め込んだもので、ハイエンドのコンセプトであり、これに続く低価格のファミリーセダンが間もなく登場すると、エバーハードは語った。彼が描いたビジョンは最終的には実現したが、それは彼が会社を去ってからのことだった。
テスラは今月、自動車メーカーとしては初めて1兆ドル(約114兆円)という驚異的な時価総額を達成したが、15年前にこの会社をメディアに紹介したCEOは、史上最も裕福な人物にはなれなかった。その後、エバーハードに代わってCEOに就任したイーロン・マスクは、テスラの初期出資者の一人として、2006年の記者発表に参加していた。
テスラの初代CEOのエバーハードと、初期の取締役のマーク・ターペニングは、2003年に同社を設立したが、シード資金の大半を、決済企業のペイパルの成功で財を成したマスクから調達した。テスラは、2010年の株式公開までに9回の資金調達を実施したが、その課程でマスクは自身の持ち株比率を引き上げると同時に、2人の共同創業者たちの持ち分を希薄化していった。
エバーハードはあるインタビューの中で、今でも同社の少数の株式を保有していると述べているが、具体的な説明は避けた。現在61歳の彼は、ワシントン州のサンファン諸島の自宅から取材に応じ「私はずいぶん昔に、大部分の株を売却した」と語った。「世間の人々は、私がテスラを始めたときに億万長者だと思っていたが、実際はそうではなかった」と彼は話した。
エバーハードとターペニングは、1997年にNuvoMedia という会社を設立し、電子書籍リーダーの「Rocket eBook」を開発し、2000年に同社を1億8700万ドルで売却していた。「その際に、もっと多くのリターンを得ていたら、マスクに出資を求める必要はなかったはずだ」と、彼は話した。
マスクは、富には関心がないと度々発言しており、昨年はロサンゼルスの豪邸を売却して、テキサス州のスペースXの敷地内にあるプレハブのような質素な家に住んでいる。それにもかかわらず、彼は驚くべきペースで富を蓄積し続けている。彼は20%近いテスラ株を早期から所有しており、2018年に発表された長期報酬プランで、四半期ごとの業績目標を達成するたびに、数十億ドルの株式を追加報酬として受け取っているからだ。