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2021.11.20

テスラ創業秘話、イーロン・マスクに追放された初代CEOの現在

左からマーティン・エバーハード、イーロン・マスク(Chris Weeks/WireImage/Getty Images)


名誉毀損でマスクを提訴


一方で、エバーハードは、ロードスターの発売前の2007年にテスラから追い出された後、株式の大半を売却した。彼は、名誉毀損でマスクを訴えたが、非公開の条件で和解した。エバーハードは、自身とターペニングだけでなく、マスクや元CTOのJB・ストラウベル、初期のエンジニアのイアン・ライトらが、テスラの共同創業者と呼ばれることに反対していた。

「テスラから追い出されたとき、私には本当にお金がなかった。さらに悪いことに、知的財産権絡みの契約で、他社への転職が禁じられていたため、1年間は仕事に就くこともできなかった」

エバーハードは、彼が保有するテスラ株の詳細を明かしていないが、彼がビリオネアではないことを認めた。現在は、シリコンバレーのベンチャーキャピタル「スペロ・ベンチャーズ」のパートナーであるターペニングも、テスラ株を保有しているが、上位株主には含まれていない。

テスラの5人の共同創業者のうち、同社株でビリオネアの地位を獲得している可能性が高いのは、2019年にテスラを去ったストラウベルのみで、彼は推定約13億ドル相当のテスラの株を保有している。バッテリーリサイクル企業の「レッドウット・マテリアルズ」を創業したストラウベルは、この件に関するコメントを控えた。

テスラの設立から数カ月後に入社したエンジニアのライトは、2004年に別の電気自動車会社を設立するために退社したが、今から数年前に株式を売却していた。「今はもうテスラの株は持っていない。あの会社が1兆ドル企業になるとは、想像もつかなかった」と、彼はフォーブスの取材に述べた。

テスラは、マスクを世界で最も裕福な人物にしただけでなく、ベンチャー投資家のアイラ・エーレンプレイスやオラクルのラリー・エリソン、マスクの弟のキンバルなど、クリーンエネルギーの未来の可能性に賭けた投資家たちに富をもたらした。

アップルと同じ「富の独占」の構図


マスクは、創業当初のマネジメントの混乱を経て、テスラの主導権を握った。マイクロソフトやアルファベットなど、評価額が1兆ドルに達した他のハイテク企業は、共同創業者の中から複数のビリオネアを生み出しているが、マスクのように単独で経済的利益を独占した例も、それほど珍しいものではない。
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編集=上田裕資

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