コロナ禍の間、海外からの便を完全にシャットアウトしたマッカラン国際空港は、ラスベガス特有の派手なコスチュームに身を包んだ長身のショーガールの大歓迎をもってロンドンからの旅行客を受け入れた。
コロナ禍以前、海外からの観光客の4割はヨーロッパからの人たちが占めていたので、完全復活への期待がかかる。
問題を抱えながらも国境は開かれた
時を同じくして、厳重なゲート(高速道路の料金所のようなものだが、ライフルを持った警備警官が固めている)で管理していた陸続きのメキシコとカナダとの国境も解禁になった。
メキシコとの国境では、かつてない長蛇の列ができ、特に南カリフォルニアのシーワールドやディズニーランドへ向かうメキシコ人の観光客で賑わっていると報じられた。
カナダ側との国境も同じで、東部のバーモント州の国境検問所では、さっそく車の渋滞ができた。またニューヨーク州との国境では、入国審査が午前2時でも2時間半待ちだという。
例年、このシーズンには、アイスホッケーの試合を観戦する人たちや選手たちの車がカナダとアメリカを往復する光景がよく見られていたが、去年はコロナ禍のせいで完全にシャットアウトされていた。
西海岸のワシントン州の国境検問所には、「この国境が二度と閉まることがありませんように」という標語が掲げられた。まさに、いまのアメリカの空気を象徴している言葉かもしれない。
日本には陸続きの隣国がないのでなかなか想像できないとは思うが、「検問所の向こうは隣国」という風景は、国々は相互に依存して成り立っていることを実感させてくれる。
カナダの車もメキシコの車も、基本的にはアメリカにそのまま入国して運転するのに不都合は無い。20世紀までは、カナダとアメリカ間は各州が発行する免許証さえあればパスポートがなくても入国できたという具合だ。
南の国境は、数年前からの中南米の国々の政治不安によって、多くの人々が難民化しアメリカ南部に押し寄せるということがあり、いまだに大きな問題を抱えている。トランプ大統領の壁建設の政策もあったが、国境警備はますます強化され、違法に入国しようとして拘束された人々の人権問題は前政権時代以上に深刻だ。
とはいえ、コロナ禍や難民問題を抱えながらも、それでも国境はこうして開かれた。