ついに渡航規制が緩和されたアメリカ。日本はいつまで?

11月8日、メキシコ国境の検問所(Sandy Huffaker/Getty Images)


日本はあいかわらず「鎖国」を


ラスベガスに話題を戻すと、11月2日から5日まで、自動車部品に関する世界一の見本市「SEMAショー(Specialty Equipment Market Association SHOW)」が開催された。このコンベンションは、カーマニアが殺到するモーターショーとは違い、自動車業界、特にアフターマーケットに携わる企業が最大に注目するシリアスなショーで、50年以上の歴史がある。

前月行われたカジノ業界世界最大のコンベンション「G2E(Global Gaming Expo)」が芳しくない賑いだったので、このSEMAも開催が危ぶまれていたが、コロナ禍をめぐる社会の対応が目まぐるしく変わり、感染拡大以降、初めてコンベンションセンターの収容人員が定員の100%に届いた。

イベントには1300以上の企業の出展が実現したが、気になったのは日本から人が来ていないことだ。アメリカが国を開いているというのに。

普段なら、日本からの参加者が押し寄せるこのコンベンションだが、実際に参加した人間によれば、日本人はほぼおらず、日本企業のブースもアメリカ人のスタッフで運営されていたとのことだ。

また前月に行われる予定だったテレビ関連コンテンツの大型展示会「National Association of Broadcast(NAB)Show」も、ソニーやキヤノン、パナソニックが出展を辞退したために、来年の4月に開催延期となったばかりだった。

1月には、20万人の参加者が見込まれる世界最大のエレクトロニクスショー「CES(Consumer Electronics Show)」もラスベガスで開催される。主役はGAFAMとサムソンと中国といった態様になってはいるが、それでも例年、日本からの参加者はアジアのなかでも主要な位置を占め、会場での商談も活発だった。しかし今回は、日本からがどれだけの人が来るのか、関係者は不安を隠しきれないでいる。

一方、日本は海外渡航者についての隔離政策が相変わらず厳しい。アメリカや欧州のほとんどの国からの渡航者は原則禁止で、日本人であれば入国を認めるが、しかし14日間自宅での待機を命じられ、これを「MySOS」というスマホアプリのGPSでモニターされる。

これは、海外諸国と比べても著しく壁が高い。日本が壁を高くし続けるから、日本人は海外へ行けない。こういう政策を半年以上続けている。

この隔離政策はつい先日緩和され、ビジネス目的に限って自主隔離は3日間となった。ところが、そのための許可申請書類は複雑かつ面倒で、ビジネスに関連する省庁の関連部署に「電話」して書類の申請方法を聞き、申請して許可が出たら脱出可能という状態だ。

日本に入国後の移動は指定席か「事前予約」したタクシーのみ。該当者と食事をした人は10日間の経過観察(検温など)が必要で、活動計画に基づいて行動しないと位置情報報告や先のMySOSのオンライン動画通話でチェックされてしまう。

ワクチン接種率が、先進国でトップレベルに立ったいま、日本がそれでも「鎖国」を続けるメリットはどこにあるのだろうかと思ってしまうのだ。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
過去記事はこちら>>

文=長野慶太

ForbesBrandVoice

人気記事