ビジネス

2021.11.15 10:00

26歳で上場企業CEOになった「自動運転トラック」の起業家


大手企業の物流トラックを自動運転化


エンバークの事業モデルもまた、創業当時から大きくは変わっておらず、収益の大半をSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)型のビジネスモデルで得ている。エンバークは、一般的な大型トラックに搭載可能な自動運転システムを、アンハイザー・ブッシュやDHLなどの大手企業に提供し、走行距離に応じた利用料を請求している。

ロドリゲスによると、エンバークは2016年以降、調達資金と従業員数を毎年少なくとも2倍に増やしている。今回のIPOにより、同社は2024年までにエンバーク対応トラックの1万4200件以上の予約を満たすことを目標に、事業を拡大していく予定だ。

エンバークはまた、ロドリゲスと同じ30アンダー30出身のオースティン・ラッセルのLiDAR企業「ルミナー」との提携を発表し、これらの新しい車両にルミナーの技術を導入する。

エンバークのソフトウェアを搭載すれば、理論上は、大型トラックの高速道路上の走行は、完全な自動運転化が可能になる。しかし、物流分野の自動運転化に向けた法整備が完了するまでの間は、人間のセーフティドライバーの同乗が必要だ。

エンバークの自動運転テクノロジーは、ドライバー不足に苦しむ物流業界だけでなく、大型トラックの燃費効率を10%以上高めることから、環境問題の専門家からも高く評価されている。

しかし、この分野で注目を集めているのは、エンバークだけではない。TuSimpleや、ウォルマートが出資するGatik、アルファベット傘下のウェイモや、アマゾンが出資するオーロラも、未来の輸送分野で重要な役割を果たそうとしている。トラック輸送は、米国では8000億ドル、世界的には4兆ドル規模の市場であり、今後も成長が見込まれている。

TuSimpleは、エンバークと同様なビジネスモデルを持ち、今年4月にSPACとの合併によって上場を果たし、比較的安定した株価を維持している。さらに、オーロラも先日、上場を果たしたばかりだ。

エンバークに出資したSPACのノーザンジェネシスは、この競争を脅威ではなく、むしろチャンスだと捉えている。同社のCEOのイアン・ロバートソンは、「このような状況になるのは必然だ」と語る。

「この分野が、勝者総取りの市場だとは考えてない。エンバークの技術は、この分野の他の企業と同等かそれ以上だと私は考えているし、彼らはこの分野で最も長く活躍してきたチームだ」と、ロバートソンは語った。

編集=上田裕資

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