電話相手の人たちからは「エヴァ・エル」として知られている彼女は、カリフォルニア州サンフランシスコのスタートアップ、イニフィニタス・システムズ(Infinitus Systems)によってつくりだされたソフトウェアロボだ。同社は、医療保険に加入している患者が受けられる給付の確認という、多くの病院や薬局がわずらわされている単調で時間のかかる事務手続きを自動化する技術を手がける。
この作業を人間がする場合、通常、事務部門のスタッフが最低2人必要となり、電話口でえんえんと待たされたり、同じ質問に何度も答えなくてはならなかったりする。だが、イニフィニタスはエヴァに電話をかけさせ、人間と話をさせることで、「こうした電話を標準化した」とアンキット・ジェイン最高経営責任者(CEO、36)は説明する。
標準データ要素を作成し、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を用いてより多くのデジタル情報を取得し、保険会社への電話の時間を短縮する。そうすることでイニフィニタスは、ゆくゆくは電話やファックス自体を用済みにするという、医療管理のより大きな変革の準備も整えている。
「このままいけば、数年後には電話をかけるのも受けるのも機械になっていておかしくありません。ですがその場合、機械どうしが英語で話す必要はないでしょう。そして、それこそわたしたちが築こうとしている未来なのです」(ジェイン)
これは、有力ベンチャーキャピタリストが後押ししたくなるビジョンだろう。イニフィニタスは10日、シリーズBラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達したと発表した。ラウンドはアルファベット傘下のベンチャーキャピタル、GV(旧グーグル・ベンチャーズ)が主導し、すでに出資しているクライナー・パーキンスやコーチュー・マネジメントなども参加した。
関係者によると、インフィニタスは今回のラウンドで2億7500万ドル(約310億円)の評価額を得た。累計の資金調達額は5140万ドル(約587億円)となっている。