伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来 人工衛星が守る私たちの暮らし

(c)小山宙哉/講談社


まちづくりの基盤としての衛星データ


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常間地:それから、衛星は「まちづくり」にも役立てられているんですよ。

私は、SDGsの目標にもある「住み続けられるまちづくり」とは、住みたい場所に、安心して住み続けられることだと考えています。近年は、地球温暖化の影響で、世界のあちこちで災害が増えていますが、それを理由に住みたいまちを離れなくてもいい。自分の意思で住む場所を決められることこそが重要です。

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衛星が捉えた山火事の様子。(Planet Labs)

私たちは、地球上で起こっていることのごく一部しか知りません。洪水や山火事などの災害は自分の目で見るか、報道を通じて知るのが一般的。限られた情報をもとに手探りで生活している状況です。例えるなら、真夜中に猛獣がいるサバンナで、ライトで照らされて見えている情報を頼りに歩いているかのよう。それが人工衛星による地球観測技術を使えば、より多くのことが“見える化”され、安心して住めるまちの土台を地球規模で整備できます。

せりか:今後はリアルタイムでの情報取得も可能になるかもしれません。そうすれば、さらに災害対応でも衛星が活躍しそうですね。

常間地:そうですね。今は、数時間から数日おきにしか、衛星が観測した特定のエリアのデータを地上へ送信できません。それがリアルタイムで情報を取得できるようになれば、土砂崩れの予兆を察知したり、山火事は火種の段階で発見したりできて、被害を最小限に抑えられるでしょう。突然起きる災害の被害を軽減することが、サステイナブルな経済活動につながるのではないかと思っています。

宇宙空間でできることの幅を広げる通信


せりか:衛星には、通信を目的としたものもありますね。国際宇宙ステーション(ISS)に滞在している宇宙飛行士たちは、インターネットを使って管制官とやりとりをしたり、家族と連絡を取ったり、YoutubeやTwitterに生活の様子を投稿したりすることもできます。実はこれらには、静止衛星を使った通信技術が使われています。

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昔に比べれば、ISSの通信環境はよくなったと聞きますが、大容量の実験データを地上に送信するのには時間がかかってしまうことがある状況です。
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