依存症のバーチャル治療提供のスタートアップ、130億円強を調達

リサ・マクラフリン(左)とロビン・マッキントッシュ(右)(ワークイット・ヘルス提供)


これまでに2万人以上の患者が、ワークイット・ヘルス経由で治療を受けている。加えて、同社は230以上のヘルスプラン(医療サービスシステムの提供者)と契約し、治療を受けようとする患者にとって最大の障壁の一つである「費用が高すぎる」という問題の解決に取り組んでいる。

理想を言えば、健康保険会社は、身体疾患の治療だけでなく、メンタルヘルスに関する医療サービスについても保険の適用範囲とするべきだろう。だが、リハビリ施設での入院による依存症治療には高額の費用がかかるため、保険適用を受けようとすると、患者と医療サービス提供者は、さまざまな障壁や煩雑な手続きに悩まされるのが常だ。

ワークイット・ヘルスによれば、同社の会員となった患者1人にかかる費用は、年間で平均4200ドル前後。サービスを現在利用中の会員は約6000人いるという。社内データによれば、会員のうち84%は、30日間以上継続して同社のプログラムを利用しており、治療期間が1年を超えるメンバーも41%に達している。

従来の治療プログラムとワークイット・ヘルスの手法を比較した時、その最大の違いの一つは、単に依存症を治療するだけでなく、患者の全人格を対象とする包括的ケアに重点を置いている点だ。例えば、同社ではプライマリーケアを担当する医師をスタッフとして配置しているため、患者は、物質使用障害の治療のための薬剤だけでなく、他の疾患に関する薬についても処方箋を書いてもらうことができる。具体的には、(過度の飲酒や、薬物を打つ注射器の使い回しが原因で起きやすい)肝炎の治療薬や、HIV感染のリスクを減らすためのPrEP(曝露前予防内服)などの処方が可能だという。

だが、従来の依存症回復プログラムからマッキントッシュとマクラフリンが学んだ最大の教訓の一つは、患者には「寄り添ってくれる存在」が必要だということだ。

ワークイット・ヘルスでは、治療はバーチャルで実施されるが、会員向けに対面治療を行うクリニックも用意されている。今回の調達ラウンドで得た資金は、主にエリア拡大を迅速に進めるために用いられる。「2022年は、1カ月に1州のペースでエリアを広げ、最終的には全国展開を完了させる」計画だと、マッキントッシュは明かした。

デジタルヘルス関連企業の創業者は、シリコンバレーの伝統にならい、アイビーリーグに属する名門大学やビジネススクールの学位を持つ者が多い。ワークイット・ヘルスの両CEOは、自分たちにはそうした学歴はないと認めるが、2人は学閥による人脈では決して得られない大きなアドバンテージがある。それは、自身が依存症の治療や回復のプロセスを身をもって体験しているという点だ。

「ワークイット」という社名も、「努力すればきっと効果は現れる(It works if you work it)」という、依存症からの回復プログラムでよく知られたキャッチフレーズからとられたものだ。

「私たちの務めは、患者がどのような道を希望するとしても、確実に目指すところにたどり着けるようにすることだ」とマッキントッシュは語った。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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