トランプは新党設立で共和党を威迫、米ABC記者が新著で詳述

James Devaney/GC Images

米大統領としての任期が終わりに近づいたころ、ドナルド・トランプは自身が所属する共和党(GOP)の指導者に対して再び、「離党して新党を立ち上げる」意志を伝えていたという。

米ABCテレビのジョナサン・カール記者が、新著「Betrayal: The Final Act of the Trump Show」の中で明らかにしたところによると、トランプは2020年の大統領選での敗北という「合法的な結果」を覆すための闘いに、党指導部から十分な支援が得られなかったことに報復したいと考えていたという。

その後、トランプは1月20日に共和党全国委員会のロンナ・マクダニエル委員長から「別れあいさつ」の電話を受けた。このときの2人の会話を聞いていたという関係者はカールに対し、「非常に後味の悪い」会話になったと明かしている。

トランプはこの電話で委員長に対し、GOPとの関係は「終わった」として、自ら新党を結成するつもりであることを伝えたという。自身に対する弾劾裁判の実施に賛成した議員がいたことへの、復讐の意味もあったとされている。

これに対して委員長は、党を去ればトランプは「終わりだ」と反撃。さらに、GOPはトランプが選挙結果を巡って起こした訴訟の費用を負担しないこと、トランプが選挙活動に利用していた共和党の支持者およそ4000万人分のメールアドレスが記載されたリストへのアクセスを遮断することを伝えた。

カールの著書によると、トランプはこの5日後、離党の考えに関する発言を撤回したされている。委員長とトランプはどちらも、こうした会話を交わしたとされることを強く否定。トランプはカールに対し、この話は「でたらめだ」と説明したという。

大統領選で民主党のジョー・バイデン候補(当時)に700万票以上の差を付けられ、敗北したことで、トランプが精神的に落ち込み、動揺していたことは広く報じられている。

一方、トランプは2021年1月6日に起きた米連邦議会議事堂の襲撃事件について、支持者らを扇動し、選挙結果を覆そうとしたとして弾劾訴追された。前例のない2度目の弾劾裁判は、史上最も党派を超えて実現したものだった。GOP所属の下院議員10人が弾劾に賛成。上院議員7人が、トランプを「有罪」とした(トランプはこの前年、ウクライナ疑惑でも弾劾訴追された)。

議会襲撃事件を受けての弾劾裁判では、最終的にトランプは有罪とはならなかったものの、ミッチ・マコーネル上院院内総務(ケンタッキー州)を含むGOPのトップをはじめ、さらに多くの党員が、トランプに有罪票を投じる可能性があるとみられていた。

トランプは大統領選の結果を覆すために力を貸すことを拒否したGOPの有力議員たちを、攻撃し続けてきた。その一人が、2019年から下院共和党会議の議長を務めていたリズ・チェイニー下院議員(ワイオミング州)だ。大統領選の結果に不正があると主張するトランプを支持しなかったことで、議長を解任されている。

また、トランプは最初にGOPの大統領候補を目指した2015年も、「候補指名争いに敗れれば、無所属で出馬する」との考えがあることを否定することなく、予備戦を戦った。当時から繰り返し、党とその指導部を公然と批判している。

編集=木内涼子

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