肌色だけで24色。クレヨンとバンドエイドの多様性

写真:Crayola

クレヨンとバンドエイドの多様性クレヨンの「肌色」、バンドエイドの「肌色」。とくに日本人はそのベージュカラーの製品を、さしたる違和感も抱かず使ってきた。

だが、おとずれた「多様化」の時代、「白人の肌の色」を前提に作られたそれらの製品を、多種多様な人種民族の消費者があまねく使わされていることの方が不自然だ、という声がようやく市場に響くようになった。

以下、クレヨラとバンドエイドの「肌色多色展開」について、ハーレム在住で、ブラックカルチャーや移民・エスニックカルチャー、アメリカ社会事情全般について日本の媒体へ旺盛に発信を続ける堂本かおる氏にご寄稿いただいた。


「マッチする色がない」ガッカリ感。自尊心の欠落にも


アメリカのクレヨン最大手のクレヨラと、絆創膏の代名詞とも言えるバンドエイドが相次いで「肌色」の多様化商品を売り出した。クレヨラは通常の24色入りとは別に、同じく24色もの異なる肌色だけを詰めた「カラーズ・オブ・ザ・ワールド」を、バンドエイドは「アワトーン OurTone」と名付けた茶色の濃淡3色をそれぞれ販売開始した。

日本では「肌の色だけで24色!?」と驚かれると思うが、アメリカでは化粧品のファンデーションは何年も前から各社40色程度の展開となっている。人種民族が多様なアメリカではそれほど肌の色に対するこだわりがある。というより、幼い子供たちの素直な感性に応えるための多色化だと言える。


「ファンデーションの40色は、世界の文化を象徴している。クレヨラは新しい24色でそれをカバーしている」(資料:Crayola)

自画像を描く子供を見ていると、自分の肌にもっとも近い色を選ぼうと、小さな手にクレヨンを当てて見比べている。マッチする色がなかった時のガッカリ感は「自分はおろそかにされている」という自尊心の欠落を招いてしまう。マイノリティーの子供には同じことがクレヨンだけでなく、人形や絵本、アニメや偉人伝から習い事のバレエのレオタードやトゥシューズに至るまで、あらゆる局面で日々起こり続けるからだ。

茶のバンドエイド発売時、「涙が出そう」


全く同じ理由により、茶色のバンドエイドが発売された時には大人が「こんなの初めて!」「涙が出そう」「なぜこれほど待たされたのか」といったレビューを投稿した。明るいベージュでも絆創膏としての機能は損なわれない。だが、あらゆる商品が白人の肌の色を基準に開発されており、黒人、ラティーノ、南アジア系など肌の色の濃い人たちは「自分たちは尊重されていない」、さらには「二級市民扱いだ」とすら感じてきた。



「たかが絆創膏くらいでおおげさな」は、マジョリティー側の視点だ。人の日常生活は絆創膏やクレヨンのような些細なものの集積とも言える。その些細なものが全て自分のために作られ、それを当たり前として享受する層は、そうでない層の痛みに気付かない。

「ベージュが嫌ならキャラクターものや、赤や青のカラフルな絆創膏を使えば?」も同様だ。ノヴェルティ製品は気分やシチュエーションによって選ぶオプション。選択のない相手に押し付けるものではない。
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文=堂本かおる

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