ビジネス

2021.11.10 16:00

スポーツ広告を変える新しいアクティベーション


スポンサーシップ拡大の鍵


スポンサーシップの権利活用

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権利活用とは、スポンサーシップのコスト(権利料)以外に、権利を使ってイベントなどを行うことで、アクティベーションとよばれる。ニールセンの調査では、日本企業の平均は「1:0.4」*でコストの半分以下しか権利を活用していない。海外は「1:2.2」**と倍以上のお金を使っている。

*Nielsen Sports/**IEG 2017 Sponsorship Decision-Makers Survey

権利の変更という選択

マンチェスター・ユナイテッドの胸にあるAONのロゴは長い間その「場所」にあったが、同クラブのトレーニング施設のネーミングライツへ変更した。リスクマネジメントの企業であるAONは、知名度向上を終え、事業内容の理解向上、選手などのライフプランナーであることの訴求にシフトした。

アスリートの主張が生むメディア価値

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Source: Nielsen Sports Digital Analysis

TV vs. SOCIALスポンサーシップのメディア価値

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インスタグラムのフォロワー数が500万人を超えるアスリートの95%が、2020年にソーシャルメディア上で3.14億ドル相当のメディア価値を生み出した(上グラフ)。またスポンサーシップにとってソーシャルメディアは2023年にTVと同等の価値をもつ試算もある(下グラフ)。自分の意見を述べる「覚悟」のあるアスリートは、大きな影響力をもち、リスクもあるが潜在的な広告利益につながる力を持つ。

サッカーベッティング売上比較

アメリカ合衆国 1兆4357億円
日本 938億円

2021年4月に英フィナンシャルタイムスは、日本でのJリーグとプロ野球のスポーツベッティングが2024年の合法化へ向け検討を開始すると報じた。コロナ禍によるスポーツ市場の縮小がこの秘策でどう変化をもたらすか。注目度の上昇がスポンサー市場にも影響を与えるだろう。

日本におけるスポンサーシップの課題

「例えば、スポンサーに1億円を提供してもらうなら、単なる企業ロゴの露出だけでなく、リターンが何か提示しないと簡単にはスポンサーしてもらえない時代になっている」。アビームコンサルティングの久保田圭一はこう指摘する。

Jリーグのスポンサー収益の推移がその傾向を示す、と久保田。過去5年間の年間平均スポンサー額(J1のクラブ数20)は15〜18億円とあまり変動がない。Jリーグの人気上昇と金額が比例していないのだ。スポンサー収入増につながらない要因について、久保田は「クラブ側が自分たちの人気をアセットを売る方法へと転換できていないと思う」と指摘。リターンを求めない「パトロンモデル」がこれまでのカルチャーだった点も背景にはある。

「スポンサー収入は今後のスポーツ界にとって重要な収入源になる。それには、クラブがもつアセットを使ってスポンサー企業の課題解決に貢献する『ビジネスアライアンスモデル』を推進していく必要がある」

企業側も投資効果の説明を求めるようになってきた。そのため、スポンサーシップの獲得には、商品サービス開発から採用のリテンションに至るまであらゆるアセット活用の展開が求められる。すでにセレッソ大阪を始め多くのクラブでビジネスアライアンスモデルへの転換が動きだした。「将来的には、さまざまなリーグやクラブでこの動きが加速する可能性が高い」と久保田は日本のスポンサーシップ市場の成長に期待する。

プレミアリーグとJリーグのスポンサー収益の比較

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本庄健人◎ニールセンスポーツジャパン副社長。2008年REPUCOM Japan設立メンバー、欧州やアジアとの連携による効果測定の導入。リサーチ起点の戦略立案と実行支援の実績多数。

久保田圭一◎
アビームコンサルティング執行役員。日本、アジアのスポンサーシップに詳しく、スポーツソリューション部門のコンサルティングとして多くのリーグの成長をバックアップする。

文=中沢弘子

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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