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2021.11.10

スポーツ広告を変える新しいアクティベーション

Getty Images


変化が起きたのは、アクティベーションだけではない。大きく転換するグローバル経済、産業構造の変化などを背景に、国際スポーツ大会やメジャーリーグやチームをスポンサーする企業の顔ぶれにも変化が現れたという。

ティックトック、アリババ、AirBnb、ペイメントソリューションズといったBtoC向けにデジタルサービスを提供する企業やフィンテック企業が相次いで参入。本庄いわく、「2025年には、フィンテックによるスポンサーシップ支出は約16%を占めると予想されている」。と同時に、中国企業の活躍に目が離せないという。

「ビボ、OPPO、ハイセンス、アリババ、蒙牛乳業などの中国ブランドの存在感は2021年以降、さらに増していくだろう。エレクトロニクスやモバイル、ハイテク企業だけでなく、大手eコマースやソーシャルプラットフォームまで幅広い産業からの参入が見込まれる。特に中国自動車ブランドやフィンサーブがスポンサーシップを拡大していくことが予想できる」

スポンサーシップの過去10年間の年間成長率は、平均4〜5%台で伸びている。デジタルメディアの牽引に加えて、スポンサー企業の参入可能なイベントやリーグが増え、スポンサー企業の選択肢が拡大したことが成長の材料だ。

「中でもe-スポーツは重要度を増しており、BMWなどのメインストリームのスポンサーが参入している。また、女性プロチームスポーツの発展によって、スポンサーシップに関心のなかった企業からのスポンサー投資を呼び込むことも可能になった」。

これまで述べてきたように、コロナ禍における企業のスポーツ活用には様々な変化が見られるが、その前提として、企業を取り巻く本質的な環境の変化があると本庄は指摘する。

「私たちの調査から、消費者が社会的責任を果たしているブランドへ高い関心を持っていることが分かっています。これは以前からの潮流であり、コロナ禍で加速しました。企業側も、大手スポンサーブランドを中心にメディア露出や短期的な売上貢献だけではなく、スポーツ投資を通じた企業価値の向上にシフトしていくと考えます。その背景には、構造的な経営環境の変化があります。今後は、目的志向の強いロングタームでのスポンサーシップや、マルチステークホルダーを意識したコミュニケーションの設計を重視する傾向を予測しています」。

パンデミックによる規制の影響でスポンサーシップ投資は打撃を受けた。しかし、この苦境は企業とスポーツの関係を、リ・デザインするまたとない好機と捉えることができる。スポンサーシップの未来は、「今後3年以内のスポンサーシップ投資は、パンデミック水準前の水準を上回る可能性がある」とポジティブだ。
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文=中沢弘子

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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