尹氏は党員投票と世論調査結果で47.85%を得た。2017年の前回大統領選にも出馬した国会議員の洪準杓氏(66)も41.50%を獲得したが、わずかに及ばなかった。韓国政府の元高官は「尹氏も洪氏も元検事。大庄洞(テジャンドン)開発疑惑の真相を明らかにして欲しい民意を受けた結果だろう」と語る。李在明氏の側近らが開発を巡って不当な利益を得ていたとされる同疑惑だが、李在明氏自身の関与は明らかになっていない。
韓国世論調査会社の韓国ギャラップが5日に発表した調査結果によれば、大統領選で与野党の政権交代を望む人が57%と過去最高を記録した。元高官は「韓国人にとって不動産問題は、教育問題と徴兵問題に並ぶ最大の関心事項だ。世論には、尹氏か洪氏なら、大庄洞の悪事を明らかにしてくれるだろうという期待感があるようだ」と話す。
韓国の大統領選は元々、軍事独裁(経済成長重視)勢力vs民主主義勢力という構図が1990年代まで続いた。その後、1993年に初の文民出身大統領として金泳三政権が誕生してからは、三金政治(金泳三、金大中両元大統領と金鍾泌元首相)が中心になった。
巨大なカリスマを持つ政治家が退場してからの韓国大統領選は常に、「前政権の失政への審判」が争点になってきた。07年大統領背で当選した李明博氏は「CEO大統領」として、前職の盧武鉉政権で広がった経済不安を厳しく責め立てた。12年大統領選は朴正熙元大統領という巨大なカリスマを利用した朴槿恵氏が当選したが、17年大統領選では、ロウソク集会の先頭に立って、朴氏の不正腐敗を厳しく責め立てた文在寅氏が当選した。
そして、今度は大庄洞疑惑だ。確かに重要な問題だが、韓国のこれからの5年間を託す選挙がこの問題一色に染まっていいものか。実際、現在までのところ、韓国の重要な争点とされてきた安全保障・北朝鮮問題はほとんど話題になっていない。尹錫悦氏は検事総長として、文在寅政権の側近たちの不正を暴く役回りを演じた末に、半ばクビを切られるような格好で職を辞した。それだけに、世論の期待も大きいようだ。