セカンドライフの失敗に学ぶFB「メタバース」の危険な賭け

Justin Sullivan/Getty Images


VRとメタバースの歴史


VR(仮想現実)という言葉は、1980年代にジャロン・ラニアーというコンピュータ科学者によって生み出されたもので、メタバースという言葉は、1992年にベストセラーとなったSF小説「スノウ・クラッシュ」がそのルーツとされている。

セカンドライフを除けば、メタバースの最も具体的な例は、ビデオゲームにある。この分野で最も有名なゲームの「World of Warcraft」は、17年の歴史を誇り、運営元のActivision Blizzard社は、累計80億ドル以上の売上をもたらしている。

一方、2017年にデビューしたエピックゲームズの「フォートナイト(Fortnite)」のユーザーは、ゲーム内の空間を社交の場として捉え、Discordのようなアプリで会話を行っている。また、トラビス・スコットやアリアナ・グランデなどのアーティストは、バーチャルコンサートを開催している。

マイクロソフトもメタバースに進出し、先日は業務コラボレーションツールの「Teams」にVRとデジタルアバターを追加する計画を明らかにした。

そんな中、ザッカーバーグのメタバース構想と、他のプラットフォームとの最大の違いは、VRヘッドセットを使って仮想空間にアクセスする点だ。ザッカーバーグは、2014年にVRヘッドセットメーカーのOculusを20億ドルで買収し、その基礎を築き始めていた。その後、フェイスブックは5社以上のVR関連企業を買収しており、最近ではロサンゼルスを拠点とするゲーム開発企業Withinを買収するなど、今後もこの分野の買収を継続すると述べている。

ザッカーバーグがメタバースにこだわる理由


ザッカーバーグがメタバースにこだわる理由の一つとして、フェイスブックがユーチューブや TikTok、スナップチャットなどに若いユーザーを奪われていることが挙げられる。

さらに、テック業界では反トラスト法(独占禁止法)の問題がクローズアップされているため、フェイスブックは新たな企業を買収することが難しい。そのため、若者にアピールできるアプリを自社で生み出す必要に迫られたザッカーバーグは、VRを中心としたメタバースに活路を見出したと考えられる。また、メタバースへの注力によって、フェイスブックは、ここ最近メディアの注目を集めている内部告発のスキャンダルから、世間の目をそらすことが出来そうだ。
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編集=上田裕資

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