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L’arcobaleno ブランド創設者 森川正大

コンパクトな「スマートウォレット」を誕生させたことで一時代を成した「ラルコバレーノ」がコロナ禍にもかかわらず堅調だ。その背景には日本人の緻密な企画力とイタリアの卓越したクラフトマンシップがあった。


ファッション業界に「SLG」という用語がある。これはスモール・レザー・グッズの頭文字をそれぞれ取ったもので、バッグと靴以外の革製品。つまりは財布やカードケース、キーケースなど雑貨を指す言葉だ。

ここで身の周りの人をチェックしていただきたいのだが、普段ファストブランドなどで身を包んでいる人であっても、財布やカードケースだけは上質な、ブランド品をもつ人が多い。価格が比較的求めやすく、所有者のステータスをわかりやすく物語るから、それだけは頑張ってブランド品をもつという人もいるし、ギフトとして贈られた人も多いだろう。

つまり、SLGの売り上げは決してスモールではない。むしろ、ブランドの経営をボトムアップで支えているのはアパレルではなく、バッグやSLGなどのレザープロダクトであることは、ファッションビジネスにかかわるものなら誰もが体感値としてもっているところだ。

清澄白河の直営店がコロナ禍でも好調なスタート


さて、この2年間に及ぶパンデミックはファッション業界にも大きなネガティブインパクトをもたらしてきたが、そんななかでも2020年6月というコロナ禍中に清澄白河に初の直営店をオープンさせた「L‘arcobaleno(ラルコバレーノ)」が好調なすべり出しをみせている。

「東京都現代美術館」に近く、アート雑貨やカフェなど高感度のライフスタイル系ストアが相次いで店を開く清澄白河というエリアへの注目度の高さも一助となっているだろうが、なにより、大手セレクトショップや百貨店で販路を拡大してきた「ラルコバレーノ」が初めて店舗をもったということが話題となった。

アパレルや、バッグ&靴を製造せず、イタリアの委託工場で生産するSLGを主軸に据える同ブランドは08年の創業以来、どのような軌跡を描いてきたのだろうか。そして未来への展望は? ブランドを創設し、企画とディレクションを手がけた森川正大に聞く。


コロナ禍でも好調な「L’arcobaleno(ラルコバレーノ)清澄白河店」(東京都江東区三好3-8-8)。

日本人の繊細な感性、緻密な企画とイタリア人の卓越したモノづくり


「ファッションは大好きでしたが、まさか自分がブランドを立ち上げるとは、想定外でした」と笑う森川は、01年に27歳でイタリア・フィレンツェへ渡った。当時、日本のファッション市場は成熟し、日本人バイヤーが買い付けた品は世界で売れるといわれた時代。

伝手を得て、いろいろなブランドの買い付けを委託で請け負うようになり、次第に自ら企画した商品をイタリアで生産し、日本で販売するようになったのだという。「ラルコバレーノ」の誕生だ。

「最初からSLGに専念するつもりでした。ほかのアイテムはシーズンごとに商品を入れ替える必要があるし、アパレルや靴はサイズ展開も必要。SLGならシンプルに勝負をかけられるな、と」

なかでも、当時長財布が主流だった市場へ、コンパクトな「スマートウォレット」というアイデアをもち込み、成長期をデジタルの台頭とともに過ごしたミレニアル世代を中心に絶大な支持を受けた。この「スマートウォレット」とは、カードケースと小銭入れ、紙幣入れをコンパクトに一体化した財布であり、なかには交通系ICカードやスマホを収納できるタイプもある。現在はさまざまなブランドから発表されているが、そのオリジンは「ラルコバレーノ」にあったというわけだ。

「何枚カードを収納するか。小銭の出し入れをしやすくするには。紙幣に折り目をつけないためにどうするか、などユーザー目線からの使いやすさを追求し、徹底的に試作を繰り返しました」


一点のスマートミニウォレットにこれだけ多くのレザーが使われている

また、その素材は仏アルラン社製の上質なやぎ革をメインに、レザーをライニング(裏地)に至るまで使用。TUTTO IN PELLE FATTO A MANO(オールレザーハンドメイド)と商品に刻印されているように、ミラノ郊外にある専用の委託工場で、熟練した革職人がすべて手仕事で仕上げている。

例えば一点の「スマートウォレット」には、ポケットの数と用途に応じて、0.1㎜にまで削いだレザーが十数枚使用されており、それらをすべて縫い合わせていく作業は皮革を扱うことに長けているイタリアにあっても、最高峰の技術を必要とするものだ、と森川は胸を張る。

売り上げを拡大したウィメンズ市場への参入


当初「ラルコバレーノ」のメインカスタマーは男性であったが、いまは女性のシェアが増え、男女比が逆転しているという。

森川はこの点について「SLGをファッションととらえている女性には、いままでハイブランド品とノーブランド品の二極化した選択しかありませんでした。そこに『ラルコバレーノ』というファクトリーブランドが認識され、アフォーダブルな価格と、品質と機能の高さから支持してくれているのではないでしょうか」と分析する。

誰しもがぱっと見てわかるブランド品のマウンティング合戦に疲れた女性たちのスマートな選択だとも言えるだろう。女性たちを惹きつける理由のひとつには、バイカラー(2色使い)を取り入れた美しいカラーパレットも挙げられる。


それまでは黒や茶などモノトーンだったSLG市場に、美しいカラーパレットをもち込み、さらにはバイカラーでの展開がヒットにつながった。

日本発世界へと発信できるSLGブランドへ


では、「ラルコバレーノ」は今後どこへ向かうのか。森川が見据えているのは、やはり世界だ。「日本発のファッションブランドでグローバルの規模まで成長しているものはありますが、SLGを中心としたものはまだありません。日本の緻密な企画力と、イタリアの卓越したモノづくりを武器とする我々なら世界を舞台にできるはず」

「L‘arcobaleno(ラルコバレーノ)」とはイタリア語で「虹」の意味だ。スモール・レザー・グッズならぬ、スモール・ラグジュアリー・グッズが世界へと続く虹のかけ橋となるか。今後には新素材の開発や、ラインナップの拡充を控えている。

L’arcobaleno/エンメ
https://www.emme.jp/


森川正大◎「L’arcobaleno」ブランド創設者。1974年、香川県生まれ。2001年にイタリア・フィレンツェへ渡り、08年ミラノにて革小物ブランド
「L’arcobaleno」を創業。

Promoted by ラルコバレーノ / photographs by Kazuhiro Fukumoto / text and edit by Miyako Akiyama

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