中国からの物品の輸入プロセスを滞らせている大きな要因は5つあり、しかもその影響は、今後もしばらく続くと見られる。以下では、それらの要因について解説していこう。
1. 冬季のエネルギー不足
中国では、家庭の暖房向け需要が最も高まる冬に向かいつつあるなかで、季節要因によるエネルギー不足に陥りつつある。
報じられているところによると、中国の工場は、電力供給の制限、さらには完全な供給停止にも直面している。
中国政府は、石炭増産の許可に踏み切るなど、状況の改善に向けた取り組みを行っているが、対応の遅れは否めない。発電能力が通常レベルに戻るまで、ある程度の時間がかかる可能性がある。
2. 冬季五輪の開催に伴う工場の操業停止
前回中国が五輪を開催した2008年夏、政府は、ほぼ全土にわたって、多くの製造施設に休業を命じる施策を実施した。これは、これらの工場から発生する汚染物質を減少させ、五輪に出場するアスリートにきれいな空気を提供するとともに、世界により良い印象を残したいとの意図に基づいたものだった。
中国とビジネスを行っている複数の企業からの報告から判断すると、中国政府は、冬季五輪の開催を前に、前回と同様の施策を実行するようだ。2022年の冬季五輪は2月4日から、2008年の夏季大会と同様に北京で開催される。
今回の取り組みは、真冬というタイミングを考えると、前回よりもかなり難しいものになると見られる。この時期、中国は電力のかなりの部分を、石炭を燃料とする火力発電に依存しているからだ。
3. 春節(旧正月)の到来
春節(旧正月)前後の連休については、過去2年の状況は今回よりも複雑だった。コロナ禍のもとで、人の移動は厳しく制限されていたが、一部の工場は操業を継続していたからだ。
2022年の春節に際し、中国当局が国内移動をどの程度まで許可するかは不明だ。ただし、この2年間、満足に移動できなかったことにより、旅行需要は高まっている。こうした動きに押されて、工場が比較的長期の操業停止に踏み切る可能性はある。
冬季五輪の開催時期は、意図的に春節(2022年は2月1日)前後の連休と同時期に設定されたことは間違いない。製造業は、春節に伴う休みの前に増産を実施するのが通例だが、2022年はその効果が、エネルギー不足と冬季五輪という前述した2つの要因によって、おそらくは帳消しになるだろう。