医療福祉などのコンサルティングを手がけるグローバル企業マーサーの最新分析では、雇用主の36%が「なんらかのワクチン接種命令をすでに導入している」ことが明らかになった。マーサーによれば、この結果は2021年10月に実施した調査にもとづくもので、1週間たらずで1000件の回答を得たという。
マーサーの健康関連調査担当責任者を務めるベス・ウムランド(Beth Umland)は、従業員100人以上の企業に新型コロナワクチン接種を義務づける米政府の方針に言及しつつ、「職場でのワクチン接種義務づけは、バイデン大統領がそうした方針を発表する前からすでに勢いを得ていた。その原動力になっているのは、従業員を安全に職場へ復帰させ、顧客を守る必要性だ」と話した。
その勢いはますます加速している。米国の一部地域で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が依然として流行していることから、新型コロナワクチン接種を義務づける雇用主がますます増えているからだ。一方で各企業は、従業員が安心して職場へ戻れる環境をつくるための対策に取り組んでいる。そして、全従業員への接種義務づけを、新型コロナウイルス感染症から全員の健康と安全を守るためのカギとして認識させようとしている。
カイザー・ファミリー財団(KFF)による最新調査では、労働者の4人に1人(25%)が、「雇用主がワクチン接種を義務づけている」と回答している。この割合は6月時点ではわずか9%だったが、そこから上昇していることがカイザーの分析で示されている。
カイザーのデータによれば、自分の雇用主にワクチン接種を義務づけてほしいと考えている労働者はおよそ5分の1だが、義務づけを望まない人のほうがはるかに多い(51%)。この点は、義務づけを検討しているものの、従業員が辞めてしまうのではないかと心配する雇用主の懸念材料になっている。
「雇用主の大多数は依然として、義務づけが離職率に与える影響を懸念している」と、マーサーのウムランドは述べている。「雇用主は、効果的なコミュニケーションに注力する必要があるだろう。また、(ワクチンではなく)検査というオプションも検討するべきかもしれない」
とはいえ、これまでのところ、ワクチン接種義務づけは、離職率にさほどの影響を与えていない。
「義務づけを実施した組織の71%では、離職率に対する影響は見られなかった。ただし、25%では離職率が若干上昇し(通常より1~5%上昇)、4%では大幅に上昇した(通常と比べて5%超の上昇)」とマーサーは分析している。