2021年5月のある日、練習を切り上げたコナー・マクレガーは、米フォーブス誌からの電話に飛びついた。「ずいぶん長くかかったもんだ。ぶっちゃけ、ずっとこの電話を待ってたんだよ」。マクレガーは、自分がこの一年間に最も稼いだスポーツ選手となったことを知ると、そう言った。総合格闘技UFCの元王者にして世界的な知名度をもつアイルランド人の“暴れん坊”は、かの有名な16年の動画で予告した通り、栄冠を手に入れたのである。彼は動画のなかで、その年のアスリート長者番付1位になったサッカー界のスーパースター、クリスティアーノ・ロナウドに向かって冗談まじりに「たぶん来年は」と、自分が1位になってやると言い放っていたのだ。
けんかを売るのは昔からマクレガーの成功の秘訣で、常に論争の的となってきた。13年にUFCにデビューして以降、連戦連勝を重ねて15年にはフェザー級王者、翌年にはライト級王者となった。彼は、最も優れた技術をもつ格闘家とは見なされていないが、その戦闘力とスタイル、挑発的で派手な言動が強烈に組み合わさることで、誰もが知る人物となった。
“最大の給料日”となったのは、9つの世界タイトルを獲得したフロイド・メイウェザー・ジュニアに挑んだ17年のボクシング試合だ。マクレガーは試合には負けたが、8500万ドルの報酬を得た。
有名になるにしたがって、マクレガーには悪行疑惑がつきまとうことになった。例えば、19年に表面化したアイルランドでの性的暴行容疑については、警察の捜査後に不起訴になったが、民事訴訟はまだ継続中。マクレガー自身はすべての容疑を否定している。