過去と未来をつなぐ、極上ニット


小暮:本社のあるソロメオ村の写真を見たことがありますが、豊かな自然をもった場所です。このニットも、あの場所で職人たちが丁寧に編んでいるかと思うと「ふるさと納税」でもするかのような気分で買うべき製品かもしれませんね(笑)。

森岡:ニットに使われているすみれ色は「ブルネロ クチネリ」が得意とするカラー。本拠地のウンブリア州の自然からインスピレーションを得ています。「ブルネロ クチネリ」ではこのような色を「ニュートラルカラー」と呼んでいますが、コーディネーション全体を同系色でまとめる手法も「クチネリ流」と呼ばれるほどで、ブランドを象徴するスタイルとして認知されるようになりました。

小暮:昨今、トレンドに敏感になり過ぎるあまり、ストリートファッション的な要素が強調されたブランド、アイテムが多いように思います。しかしそうしたアイテムは、ビジネスを主軸にする紳士のスタイルには向かないものもあります。

森岡:そういう意味では「ブルネロ クチネリ」というブランドは、紳士のための本質的なスタイルを追求しているように思えますし、コレクションの一貫性が感じられます。スポーティなカジュアルの要素もブランドの基盤にありますが、このブランドがつくるカジュアルはあくまでもシックで洗練されている。だから世界中の多くの紳士淑女から長く支持されているのです。

小暮:ブランドのアイコンアイテムであるニットの場合、そうしたエレガンスさに加えて、極上の素材や着心地から伝わるある種の優しさや幸福感が感じられる。こうしたニットは、コロナ禍の昨今、さらに重要なアイテムになってくるでしょうね。

森岡:注目すべきアイテムです。


森岡 弘◎『メンズクラブ』にてファッションエディターの修業を積んだ後、1996年に独立。株式会社グローブを設立し、広告、雑誌、タレント、文化人、政治家、実業家などのスタイリングを行う。ファッションを中心に活躍の場を広げ、現在に至る。

小暮昌弘◎1957年生まれ。埼玉県出身。法政大学卒業。82年、株式会社婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。83年から『メンズクラブ』編集部へ。2006年から07年まで『メンズクラブ』編集長。09年よりフリーランスの編集者に。

photograph by Masahiro Okamura / text by Masahiro Kogure / fashion direction by Hiroshi Morioka / edit by Akio Takashiro

この記事は 「Forbes JAPAN No.087 2021年11月号(2021/9/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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