小暮昌弘(以下、小暮):今月号で取り上げるのは「ブルネロ クチネリ」です。この連載では2度目の登場。いまやイタリアを代表するラグジュアリーブランドで、最近東京・表参道に旗艦店をオープン、話題になりました。
森岡 弘(以下、森岡):今回取り上げるのはニットです。創業者でデザイナーのブルネロ・クチネリさんも最近、原点回帰をコンセプトに挙げていますが、ニットはこのブランドにとって重要なアイテムです。
小暮:確か「ブルネロ クチネリ」はカシミアのニットから始まったブランドだと記憶しています。彼が最初のアイテムとしてカシミアニットを選んだのは、「タイムレスで、捨てられることがない」からと聞いたことがあります。またタイムレスな製品をつくるだけでなく、夫人の故郷、イタリアのウンブリア州ソロメオ村にある古城を改修して本社に。工場や職人育成のための学校まで設置し、ブランドと共に地域の人々が生活し続けることができる場所へと変えたのです。
森岡:最近、ファッションの分野でもSDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれていますが、それを創業時から掲げ、さらには実践、進化させている希有なブランドですね。
小暮:今季のコレクションのテーマは「昨日と明日の統合」です。シンプルで永続的なスタイルを長年追求してきた成果をさらに発展させたもので、過去と未来をつなぐ、このブランドらしい主張だと思います。
森岡:今回紹介するニットはかなりの重量級で、着こなしの主役を演じられるようなアイテムです。さまざまに組み合わせた職人的なテクニックを駆使して製作されたショールカラーのカーディガンです。このブランドらしい優雅さが見事に表現されていると思いますが、どうでしょうか。
小暮:カーディガンは紳士、特に英国紳士好みのアイテムですが、このカーディガンの素材は本当にぜいたく。バージンウール60%とカシミア30%、そこにシルクが10%加わっていて、極上の肌触りです。
森岡:かなりボリュームがあるように見えますが、見た目よりもずっと軽やかな着心地でとても快適です。昔のヘビーウエイトのカーディガンとは着心地がまったく違います。