全米オープンでセリーナ・ウィリアムズを下し、劇的な優勝を飾って世界のひのき舞台に躍り出てから3年がたつ。23歳になった大坂なおみは、自分以外の誰のルールにも従うつもりがないことを、すでに身をもって示している。
今年の5月末、大坂は自身のメンタルヘルスを守るために、全仏オープンで出席が義務付けられているメディア会見を拒否した。その代価は1万5000ドルの罰金だった。大坂は大会を棄権することにした。
この衝撃的な決断のおよそ9カ月前、彼女は、ジェイコブ・ブレイクが警官に撃たれた事件に抗議してウエスタン&サザン・オープンを棄権する意向を表明した。その後も、人種差別主義者の暴力や警官の非道な扱いの犠牲となった黒人被害者の名前を記したマスクを、全米オープンの期間中ずっと着用し続けた。
2020年全米オープンで黒人被害者の名前を記したBLMマスクで登場し支持される。
アスリートがこのような立場を取ると、企業スポンサーは一目散に逃げだしかねない。だが、大坂の場合はそうはならないようだ。このスター選手は、12カ月間で6000万ドル(そのうち5500万ドルは広告収入)を稼いでいる。しかも、それは昨年、自分自身が打ち立てたばかりの3700万ドルという女性アスリートの収入の最高額を粉砕したうえでのことだ。
この6000万ドルという金額によって、大坂はフォーブスの「世界で最も稼ぐアスリート50人」の12位に入った。これはゴルフのタイガー・ウッズと同位で、ノバク・ジョコビッチやラファエル・ナダルといった男子テニスのスター選手をはるかに上回る順位であり、昨年の29位からすればとんでもない躍進だ。
このたびの騒動の詳細をみておくと、大坂が全仏オープンを辞退するに至った論争が始まったのは、今年5月末のことだ。大坂がSNSで、自らの自信とメンタルヘルスを守るために、大会中の記者会見に出席しない旨を発表したことがきっかけだった。フランステニス連盟は、大坂の最初の記者会見の欠席に対して罰金を科し、大会から追放することも辞さないと脅しをかけた。これを受け、世界ランキング2位の大坂は、大会を棄権することを選び、うつ病と不安を経験してきたことを明かした。