そんななかで、アマゾンジャパンと出会うのです。P&Gという世界的なエクセレントカンパニーから、当時はまだ海の物とも山の物ともわからないベンチャーへの転身。どんな決断を秘めていたのでしょうか。
「大きな会社から小さな会社へ転身したことになるわけですが、誤解されることがあります。『よくいままでのキャリアを捨てて、新しい挑戦に……』などといった質問をされるんです。でも、これは違う。キャリアはなくなったりしないわけです。実際、僕のそれまでの経験は消えない。そう考えると、リスクというのはそれほど高いものではないんです」
例えば、アマゾンが進出に失敗して、日本でうまくいかなかったとする。あるいは、自分がアマゾンのなかでうまくやっていけなかったという意味での失敗があったとする。しかし、やり直そうとしさえすれば、やり直すことができるというのです。
問われるのは、勤務する会社の看板がなくても、やっていけるだけの力を持つことだといいます。
「逆に言えば、キャリアがある人は、人が思うほど転職リスクは大きくない。むしろ、リターンの大きさのほうが魅力だと思う。なぜ僕が非連続を求めるのかというと、自分が心地良く感じられるスペースというのは、自分とってはおそらく小さいものだからです。
やるべきは、自分のスキルを高め、活動範囲を拡げ、視野を広げていくこと。それこそが、自分のポテンシャルを高めていくことになるわけでしょう。人生の目的は、心地よいスペースに安住することではないですからね」
そして入社の翌年には、早くも社長という役割を委ねられます。
「誰かに何かを頼まれることというのは、実はいきなりやってくるんです。そのときに、自分が準備できた状態でいなければ、チャンスはつかめない。社長になってくれと言われたときに、僕はイエスと言えた。ポストは求めるものではなく、生じるものなんです」
そしていまもアマゾンジャパンは、チャンさんを求め続けています。一方でアマゾンの驚くほどの急成長、事業の急拡大は、チャンさんにとっても「非連続的な変化」をもたらしているのでしょう。
自らを変革し続けながらも、そのポジションでの活躍は、いま20年を超えるまでになっています。
連載:上阪徹の名言百出
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