「完璧」にこだわらない。 NTTドコモ・ベンチャーズCEO笹原優子の軸

笹原優子(撮影=小田駿一)

上下関係、ジェンダー、社内外の枠組みなどに縛られずに、チームや組織、あるいは業界に多くの実りをもたらした女性たちは、何を考え、どう行動したのか。

Forbes JAPANでは、これまでの考え方や既存のシステムを超えて活躍する女性にフォーカスした企画「Beyond Systems」を始動。約3カ月にわたり、翻訳コンテンツを含めたインタビュー記事を連載していく。

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NTTドコモ・ベンチャーズは、1000社ほどもあるNTTの連結子会社とスタートアップとの接点をつくる役割を担う会社だ。スタートアップへの投資、協業プロジェクトの推進、そしてスタートアップへの伴走支援プログラム「/HuB(スラッシュハブ)」などを主軸に、事業を展開している。

「/HuBは、若いステージのスタートアップにべったべたに付き添って事業をサポートする暑苦しいプログラムなんですよ(笑)。そうしないと、スタートアップの方たちが何に困るのかわからないでしょ?」

そうざっくばらんに話すのは、この6月に同社CEOに就任した笹原優子だ。

笹原はさらに、女性商品向けのコンサル会社を起業したり、企業間のレンタル移籍に取り組むローンディールのメンターやNPO法人ETICの「Social Impact for 2020 and Beyond」プロジェクトにプロボノとして参画したりと、社内や社外、本業や副業といった既存の枠組みを軽々と超えて活動している。

社長や代表という肩書きが持つ壁を感じさせない笹原に、自由な活動の原動力を聞いた。

コミュニケーションは最大のエンタメ


笹原は大学卒業後、エンジニアとしてNTTドコモに入社した。

もともとゲームが好きで、「エンターテインメントの場をつくりたい」とゲーム会社への就職を考えていた時期もあったが、ちょうど過渡期にあった携帯電話市場が面白そうに映った。「(携帯電話による)コミュニケーションは、これから最大のエンタメになる」と感じて、入社を決めたという。

4年後には、インターネットへの接続を可能にした世界初の携帯電話サービス「iモード」の立ち上げメンバーとなる。

当時は、携帯電話でインターネットをすることにまだ馴染みがなかった時代。どんなインターフェイスなら利用者に受け入れてもらえるのか。機種のラインナップ企画や、iモードのUI/UX戦略を練る日々が続いた。

今は当たり前になった絵文字も、コミュニケーションを円滑にする1つの仕掛けとして、笹原たちのチームが生み出したものだ。

「電車に乗ると、私たちが企画した機種やサービスをみんなが使っている。すごく嬉しかったし、やりがいもあった。ひとつの『文化』をつくっているんだという自負がありました」
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文=松崎美和子、島田早紀 写真=小田駿一

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