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「Perfect doesn’t exist」


39歳になると、MIT(マサチューセッツ工科大学)に留学する機会を得た。

当時日本でプロジェクトリーダーとして快走していた笹原は、「仕事に自信もあったし、留学する前はいい格好をしたいという気持ちもどこかにあった」。ところが、言葉の壁は思った以上に高く、思い通りにできない自分に失望。いい意味で諦めがつき、素の自分で戦うしかないと腹をくくることができたという。

「留学で掴んだいちばんの学びは『Perfect doesn’t exist』。留学の最後、何を得たかと教授に聞かれたとき、この言葉がふいに口をついて出てきました。

語学にしても、学問にしても、どんなことでも上には上がいる。完璧なんて存在しないということが、すごく腹落ちできたんです。

完璧が存在しないのなら、いまの自分にできることをやればいいだけ。それまでは『完璧じゃないと恥ずかしい』という思いが強くて、完璧を目指して頑張っていたんですが、肩の力が抜けたというか。『もういっかこれで』とすぐ行動するノリが生まれた気がします」

MBAを取得して留学から戻った笹原は、2014年にイノベーション統括部 担当部長に就任。新規事業創出を目的としたプログラム「39works」を運営し、社内起業家の支援を行うことになった。そして、2021年6月からNTTドコモ・ベンチャーズの代表に就任する。

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「当たり前」のその先へ


MIT留学で掴んだあの「ノリ」は、いまでも笹原の口癖になっていると、彼女と一緒に働くチームメンバーは言う。

「完璧じゃなくても、やったら何か変わるんじゃないの?」「なんでやらないの? やればいいじゃん」。そんな言葉に加えて、当たり前を嫌う発言も“笹原あるある”なのだという。

「そのアイデアにはもっと先があるはずだという意味で、『それって当たり前じゃない?』とはよく言うかもしれませんね。今のバイアスの中で未来を考えるのは嫌なんです」

スタートアップと協業したり、最先端の技術に投資したりすることで、今の“当たり前”を超えていくのが笹原の仕事だ。

これまでにいくつもの枠組みをビヨンドしてきた笹原は、自身のキャリアを振り返り、「壁を感じたときにこそ、角度を変えた物の見方や、イノベイティブな発想が生まれた」と話す。

「つらいと思ったり、モヤモヤを感じたりしたら、その理由を考え続けること。決して逃げたりうやむやにしたりはしない。自分が何に囚われていて、どこをつらいと感じているのか、そこから目を背けないで、言語化してみる。そうやって考えていると、あるときふと違う角度の答えが見つかったりするんです。自分に対する好奇心を持ち続けることが大事だと思います。

それから、『これしかない』と考えるとどうしてもつらくなってしまうから、いつでもやめられるというスタンスでいられるように、努力すること。本業のほかに、いくつも楽しいと思えるストーリーや伏線をつくっておくことが、結果として本業で成果を出す支えにもなるはずです」

文=松崎美和子、島田早紀 写真=小田駿一

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