失敗したら撤退、それでいい
現在、男子生徒たちも、「次は男子の頭髪についても規則が変わるんじゃないか」と期待していますし、来年ぐらいには生徒会と一緒に改定草案ができればいいなと思っています。
社会の中で、時代のブームは突然来ます。学校も社会のなかのコミュニティーであり装置である以上、髪型のブームも含めて、それらを受けとめる必要があると思います。
最近は男子生徒と話していると、「ツーブロック(トップを長めに、サイドやえり足を短めにカットしたヘアデザイン)にしたい、青田先生もしてるからいいじゃん」と言われます(笑)。
それこそ明治時代にちょんまげからザンギリあたまに変わったように、今の時代で流行りの髪型であるツーブロックも、本当は禁止する理由はない。去年7月、都議会でも、「ツーブロックの髪型を禁止する校則がなぜ存在するのか」が取り上げられ、話題になりましたよね。
ただ、たしかに行き過ぎると「モヒカン」になるし、管理する側として、ツーブロックの「定義」が気になるのも理解できる。ですが教育の本質はまず、「信じること」だと思っています。
子どもたちにまずはボールを投げる。ポイと捨てられるかもしれない、でも拾い直してくれるのを待とう、と。待つのも挑戦ですが(笑)、基本的には僕は信じてチャレンジしたいですね。
チャレンジして、ダメだったらやめればいい。失敗して撤退、また失敗、のトライ・アンド・エラーを繰り返すほどにデータが蓄積されていって、成功への確度も上がっていく。今回の髪型ルール改定もそうですが、やってみて本当にとんでもないことになったら、やっぱりやめることにする点で、生徒側からも合意は取れています。
大人との交渉で成功体験を
なによりも生徒たちには、自分たちが声を上げて、ちゃんと交渉をし、事例も挙げ、理詰めで主張すればルールは変わる、ということを知ってほしいと思うんです。
僕は、若者の投票率が低いのは、学生時代、先生に真剣に主張をぶつけたのに結局何も変わらなかった、だったら政治家にいくら言っても徒労だ、というネガティブ発想もあるのではないかと思っているんです。
「ちゃんと交渉したらルールは変えられた」という経験をすれば意識は変わる。「中学のとき、髪型の校則が変わったじゃないか」「高校時代、みんなで話してスマホを許可してもらったよな」といった成功体験がある子は、きっと投票にも行くと思います。
それもあって、子どもたちとはきちんと理詰めで交渉して、理があったら認めてあげたい、とはすごく思います。