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2021.11.05

限界を決めない。障害のある人の「才能」を伸ばせる社会へ

(左から)ヘラルボニーの松田崇弥・文登


アーティストとしての成功を後押し


文登:ヘラルボニーのビジネスは、BtoCのオリジナル商品の企画開発と、BtoBのライセンスビジネスとの両輪でまわっています。特にBtoB事業が屋台骨になっていて、最近はビルやオフィス向けの空間装飾にも注力しています。アートを壁紙やファブリックに落とし込んで販売する事業です。

崇弥:ライセンスビジネスは作家さんにとっても夢があります。例えば2021年10月には、大手の生命保険会社がノベルティとして配布するクリアファイルのデザインに、ヘラルボニーが契約する作家さんの作品が採用されました(2022年3月まで配布)。

当社では、企業コラボのライセンスの場合、上代価格の8%がヘラルボニーに入るライセンスモデルを採用しています。内訳としては、5%がヘラルボニー、3%が作家です。これまでには、1つのライセンスワークで25万円以上の収入を作家さんに還元した事例もあります。なお、2019年に厚生労働省が発表したデータでは、雇用契約を結ばずに働く就労継続支援B型の平均工賃は月額約1万6000円です。

こうした企業とのコラボレーションは、今は当社に相談が来てご要望に合ったアーティストをご紹介する形ですが、将来的にはアーティストをご指名いただけるようになりたいですね。「高橋南さんにお願いしたい」「小林覚さんにお願いしたい」などと、ご指名いただけることほど嬉しいことはありません。

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小林覚さんの「新石鳥谷音頭」紹介する崇弥

文登:アーティストが独り歩きできるくらい有名になることで、「障害があること」が前提ではなく、「1人の人間としてのこだわりや生き方、アート作品の一側面として“障害”がある」と捉えていただけるようになるのが理想ですね。

今後はさらにアウトプットのバリエーションを増やし、障害のイメージを変えていきたいと考えています。11月には丸井グループと資本委託提携し、提携クレジットカード「ヘラルボニーエポスカード」を発表しました。買い物での利用金額に応じた加算ポイント(200円につき1ポイント・還元率0.5%)から、利用金額の0.1%分が、ヘラルボニーを通じて作家の創作活動や福祉団体などに還元される仕組みです。

また、来年の秋には岩手県盛岡市に、当社が空間プロデュースを手掛けるホテルの開業を予定しています。

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ヘラルボニーエポスカード/ヘラルボニー提供
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=杉能信介

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