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2021.11.05

「周りは欲張り。僕は、ただ……」松山英樹が重圧のなかで明かした本心

プロゴルファー 松山英樹(撮影=高須 力)

次代を牽引する新しいリーダーを発掘し、ビジネスからサイエンス、スポーツ、アートなど多彩なジャンルから30人の才能に光をあて、その活動をForbes JAPANとしてエンカレッジしていくことを目的としている「30 UNDER 30 JAPAN」。

今年、スポーツ部門の受賞者として選出されたのが、プロゴルファーの松山英樹(29)だ。



2021年4月11日、日本男子ゴルフの歴史が変わった。尾崎将司、青木功、中嶋常幸、片山晋呉……数多のトッププロが敗れてきたオーガスタの難攻不落の壁を、松山英樹が初めてこじ開けた。快挙に至るまでの苦悩と努力に、10年来取材してきたゴルフ記者が迫る。


スマートフォンに起動させた地図アプリを手に、眉間にしわを寄せて言う。

「たぶん、ココだと思うんだよな」

画面に映し出されていたのはゴルフ場の衛星写真。数年前の春、松山英樹はアメリカにある自宅でオフにした時間を過ごしていた。

フロリダ州中東部の観光都市オーランドは、恵まれたゴルフ環境から松山をはじめ多くのプロゴルファーが拠点を構える。幾日か前、帰宅のためのフライト中だった彼は、着陸前の機内から街の様子を眺めた。地上を俯瞰していると、あるゴルフコースが目に留まった。

「池も多くて、面白そうなレイアウトだ」

空港との位置関係を記憶にとどめ、地上に降り立つなりそのゴルフ場をスマホで突き止め、練習がてら訪ねることにした。

慌てたのは連絡を受けたゴルフ場の人々である。フロリダにはセレブリティや有名プロを抱えるゴルフクラブがいくつもあるが、お目当てのコースは普段、プロの大会を開催できるような規模ではなかった。

松山は当時、すでに世界最高峰のゴルフ団体、アメリカPGAツアーで複数回の優勝を遂げ、世界ランキングも最高で2位まで到達。正真正銘の一流選手がプライベートでラウンドしに来るとあって、クラブ関係者たちは到着するなり彼と、そのサポートスタッフたちを丁重に出迎えた。「ようこそいらっしゃいました!」とばかりの手厚い歓迎に松山は面食らいつつ、プレイを楽しんだという。


松山英樹◎1992年2月25日、愛媛県生まれ。日本8勝(国内メジャー1勝)、米国6勝(海外メジャー1勝)。2021年に「マスターズ」で日本人男子として四大メジャー大会の初制覇を達成。(Photo by Stan Badz/PGA TOUR)
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文=桂川洋一 編集=石橋俊澄

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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