日本代表を力強く牽引し続ける森保と吉田麻也の絶妙な関係


舞台をカタールに移し、冨安も復帰した9月7日の中国代表との第2戦で辛勝しても、ネット上にはファン、サポーターの怒りにも近い声が溢れ返った。

「私自身は見ていないが、いろいろな記事が出ている状況は知人との話でだいたい想像はついた」(森保)

報道やSNSは遮断している、と中国戦後に話した森保監督の耐え忍ぶ姿と、冨安をはじめとする選手への対応を重ね合わせ吉田はさらにこう語った。

「大事なアジア最終予選の初戦を、レギュラーで出ている選手個人のキャリアを重視してスキップさせたのは、あの立場にある監督がなかなかできる決断じゃない」

吉田の覚悟


代表のセンターバックに君臨して10年あまり。そして、キャプテンを託されて3年とちょっと。時間の経過ともに吉田の存在感はピッチ内外で増してきた。

東京五輪、アジア最終予選と、日本にとって大きな戦いが続く2021年に入って、吉田の立ち居振る舞いがチームを、そして森保監督を縁の下で支えてきた。

24歳以下の若いチームへ、年齢無制限のオーバーエイジとして参戦するも4位に終わった東京五輪。キャプテンを務めた吉田は「完敗です。それでも胸を張って帰りたい」と総括した。迎えた9月のアジア最終予選を1勝1敗で終えた直後には、サウジアラビア、オーストラリアと強豪との連戦が待つ10月が前半戦のカギになってくると気持ちの切り替えを強調した。

「次の10月でしっかり叩いて、勝ち点6を取らなければいけない。正直、僕たちはもう一敗もできない状況なので、残りの8試合で全勝を目指していくだけです」

しかし、サウジアラビア戦でも黒星を喫した。

「1位で行っても2位で行ってもワールドカップはワールドカップ。上の2カ国には常に追われる立場の重圧があるし、まだまだ僕たちにも巻き返せるチャンスがある」

アジア最終予選は12カ国を2グループに分け、双方の上位2位までが無条件でカタール行きの切符を手にできる。2位突破でもいい、とした吉田はさらにこう続けた。

「もしもアジア最終予選で敗退して、このチームの活動が終わる事態になれば、おそらくガラッとメンバーが入れ替わる。自分自身もそこが区切り。ふがいない結果になってしまったら、すっぱり(代表を)やめようと思っている」
次ページ > 重圧を、力に変えて

文=藤江直人

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事