日本代表を力強く牽引し続ける森保と吉田麻也の絶妙な関係

Photo Hector Vivas - FIFA Getty images


負ければ森保監督が解任される可能性もあった10月12日のオーストラリア戦を前にして、吉田はすべての仲間たちへ檄を飛ばした。

「自分たちの結果が日本サッカーの将来に直結する。ワールドカップに出る出ないは僕たちだけでなく、サッカーに関わるすべての人たちの死活問題になる。自分たちの背中にのしかかっているそれだけの重圧を、力に変えて戦っていかないといけない」

指揮官とチームをリーダーが繋ぐ


まさに崖っぷちで迎えたオーストラリア戦のキックオフ前。国歌斉唱時にベンチ前で君が代を口ずさむ森保監督の目が、涙で潤んでいた。めったに見られないシーンを、中継していたテレビカメラが捉えた。終了間際の劇的なゴールで勝利した試合後には、組まれた円陣の中で、興奮さめやらぬ指揮官が「オレら生き残ったぞ! 絶対行くぞ、ワールドカップ!」と絶叫していた。

日本サッカー協会の公式YouTubeチャンネル『JFATV』で後に公開された動画から、計り知れないほど大きな重圧と人知れず闘っていた跡が伝わってきた。生きるか死ぬかの大一番を前に重圧への弱さとも取れる涙を見せ、試合後には誰よりも感情を高ぶらせた森保監督は、ちょっぴり頼りなく、招集した選手たちに「支えてあげたい」と思わせる独特の存在感があった。吉田が言及した「みこしを担ぎたい」に通じる。

森保監督を補完するような吉田のコメントは、メディア越しにチームへ届くと計算されてのものだろう。キャプテンとして、指揮官とチームを繋ぐ。2勝2敗の五分に戻したとはいえ、日本は依然としてグループBの4位。現状のままならワールドカップ出場は幻と消え、3位ならばさらに過酷なプレーオフに回る。アジア最終予選は11月11日のベトナム戦、16日のオマーン戦を含めて来年3月末までに残り6試合を戦うが、再び勝ち点を落とす展開になれば、厳しい批判にさらされるチーム全体が浮き足立つ非常事態も生じかねない。

日本サッカー界の浮沈がかかると言っても過言ではない、7大会連続7度目のワールドカップ出場を勝ち取るために。ピッチの内外で代役の効かない影響力を及ぼす吉田の稀有なリーダーシップは、今までと同様にこれからも代表に欠かせない武器となるだろう。

連載:THE TRUTH
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文=藤江直人

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