社会インフラとして長年整備を重ねてきた通信は、大げさに言えば「黙っていても」儲かる事業。
インフラとしての責任を負い、もちろん投資も惜しまなかった。しかし安定運用してきた通信事業は、その事業規模もケタ違い。
これに対し、海のものとも山のものともわからない新規事業はスタートからPL黒字化を確約できるわけもない。
すると「失敗を恐れる」文化から、どうしても投資に踏ん切りがつかない。数十億円程度のビジネスプランを提言しても「その程度の規模のビジネスなら不要」と切り捨てられた経験さえある。
つまり、どのような新規事業でも、通信事業と比較してしまう癖が上層部に根付いているため、「手を付けない」という判断を下しがちなのだ。
体力もあり、懐も豊かでありながら、新規事業に見切りをつけるのが「早すぎる」のも、「失敗」のレッテルを貼られないための自衛本能である。再編は社内に根付いている、こうした既成概念を覆す起爆剤となるだろうか。
今回の3社の統合により、そのシナジー効果は23年度に1000憶円、25年度には2000憶円程度を見込む。
新ドコモグループでは、現在の通信を主力にしてきたビジネスから、事業構造の転換を図り、25年度には法人事業とスマートライフ事業で、現状の収益の45%程度から過半数を占めるように見通す。
22年を起点にわずか3年で、これを具現化するのは、かなり野心的だ。
もちろん社内ではクラウド、IoT、5G、MaaS、移動・固定の融合サービス、スマートシティなどの先端ソリューションに取り組む部隊は増強され、各事業の成長に向け現場は注力している。
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あとはいかに経営判断として、新ソリューションをどこまでサポートできるか。
内部から漏れる、異動への悲観の声
ただし、こうした再編には表側と内側がある。再編ともなれば数々のポストの統廃合が行われるのは当然の流れ。
内部からは「(再編そのものは)NTT生活の中で、これまで何度も行われて来たので、特に驚きはしないが、人事異動としては、これでまた悲喜こもごも。これに巻き込まれたくないと思う人情もあります」と本音も漏れ伝わって来る。
また、この統合と子会社化については、持ち株会社、ホールディングスとしての機能しかもたないNTTから、事業会社であるドコモが不採算部門を「押し付けられた」と見るむきもあるようだ。