インドネシア当局から承認を得た同社製のワクチンは、ワクチン生産の世界最大手であるインド血清研究所が製造を手掛ける。両社はインドとフィリピン、世界保健機関(WHO)にも共同で緊急使用許可を申請しており、ノババックスのスタンリー・アーク最高経営責任者(CEO)は、数カ月後までには承認を得られるとの見通しを示している。
そのほかノババックスは単独で、欧州医薬品庁(EMA)とカナダ、英国、オーストラリアの当局にも許可を申請中。米食品医薬品局(FDA)にも、年内に申請を行う予定だという。
他社製との「違い」が利点
後発となったノババックスの新型コロナウイルスワクチンだが、すでに使用されているワクチンに比べて多くの利点があるとされており、世界的な接種率の上昇にも役立つ可能性があると期待されている。
同社のワクチンは遺伝子組換えタンパク質ナノ粒子技術を用いており、米国で実施した後期臨床試験の結果では、2回接種後(1回目から21日後に接種)の感染を防ぐ効果は90%、中程度以上の症状への進行を防ぐ効果は100%とのデータが示されている。
また、有効性の面で(ウイルスの遺伝情報の一部を注射する)米モデルナやファイザー製の「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン」と同程度とみられる一方、「(抗原となる)新型コロナウイルスの一部のタンパク質を投与することで免疫反応を促す」という従来からある技術を用いていることから、mRNAワクチンに抵抗感がある人にも受け入れられやすいと考えられている。
そのほか、超低温冷凍が必要なファイザーとモデルナのワクチンとは異なり、通常の冷蔵保存の温度で保管・輸送することが可能であることも、ノババックス製ワクチンの利点のひとつとなっている。
ノババックスは製造面において発生した問題により、緊急使用許可の承認が当初の予定より遅れていた。富裕国とその他の地域間のワクチン格差が問題視されるなか、低~中所得国に10億回分以上のワクチンを供給することで同意していた同社に対しては、各国からの圧力が高まっていた。
創業以来ワクチンを市場に出した実績がなかったノババックスには、トランプ前米大統領が迅速な新型コロナウイルスワクチンの開発・生産を目指して進めた「ワープ・スピード作戦」のもと、米政府から他社を大幅に上回る16億ドル(約1820億円)の助成金が交付されている。