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2021.12.06

金融アドバイスは欲しいが、受けない。根深い投資の壁の壊し方

ウェルスは顧客も金融機関も発想の転換が最初の一歩/photo by Shutterstock .com

日本において「貯蓄から投資へ」というスローガンが掲げられて久しいが、日本人が本格的に貯蓄を投資にシフトしているとは言えない状況が続いている。この問題の背景には金融機関に対する顧客の不信感があり、金融機関側が営業スタイルを改めない限り日本人が真の意味で投資に興味を持ち、行動を起こすことは難しい。

今必要なのは顧客目線に立ち返り、営業ノルマ達成のための商品販売から脱却し、顧客のニーズ・状況を踏まえた中長期的な目線での多様な商品・サービス提供、すなわち全方位型のウェルスマネジメントである。

投資に関するアドバイスは欲しい。だが実際にアドバイスを受けていない理由とは?


2021年8月に日銀が発表した「資金循環の日米欧比較」では、現金・預金の家計金融資産に占める割合は米国13.3%、欧州34.3%に対して日本は実に54.3%と圧倒的な高さとなっている。いかに日本人の預金志向が強く、投資を避けているのかが分かる。さらに、この傾向は過去20年以上にわたり大きく変化していない。

なぜ日本人の投資行動は変わらないのか。私は顧客の金融機関に対する根強い不信感が根底にあると考えている。図表1を見てほしい。アクセンチュアウェルスマネジメントサーベイ2021の結果によると、世帯総資産1億円以上もしくは世帯金融資産5000万円以上の回答者の66.6%が、投資に関するアドバイスを求めている。

もちろん自身で判断してインターネットで取引を行う投資家も多数存在するが、大多数は投資に際して何らかのアドバイスを求めているのが実情である。

図表1 アドバイスを求める顧客と、そのうち実際にアドバイスを受けている顧客の比率


【アドバイスを求める顧客の比率】

 Q:金融機関からアドバイスを受けたいですか?

(世帯総資産1億円以上または世帯金融資産5千万円以上、n=2,117)
アドバイスを求める人の割合

★66.6%|全体の6割以上を占めるアドバイスを受けたい顧客は実際にアドバイスを受けているのか?


【アドバイスを求める顧客のうち、実際にアドバイスを受けている顧客の比率】

 Q:金融機関からアドバイスを受けていますか?

(世帯総資産1億円以上または世帯金融資産5千万円以上、金融機関からアドバイスを受けたい人、n=1,410)

実際にアドバイスを求めている人の比率グラフ
※富裕層は「世帯総資産3億円以上または世帯金融資産1億円以上」マスアルフエント層は「世帯総資産1億円以上もしくは世帯金融資産5000万円以上のうち、上記の富裕層の定義に該当しない個人」が対象
出典:アクセンチュア
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文=武藤惣一郎(アクセンチュア)

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