30U30

2021.11.03

ホームレス就労支援を「ビジネス」に インパクトを出しながら黒字経営

社会起業家 市川加奈

次代を牽引する新しいリーダーを発掘し、ビジネスからサイエンス、スポーツ、アートなど多彩なジャンルから30人の才能に光をあて、その活動をForbes JAPANとしてエンカレッジしていくことを目的としている「30 UNDER 30 JAPAN」。

今年、各分野に精通した専門家や業界オーソリティ、過去受賞者で構成されるアドバイザリーボードと編集部で審査を行い、ソーシャルアントレプレナー部門の受賞者として選出されたのが、市川加奈だ。



住所がなくて働けない“ホームレス状態寸前”の人に、寮付きの仕事を紹介する「いえとしごと」を立ち上げるため、Relightを2019年に創業。20年には部屋を賃借できない人向けの賃貸サービス「コシツ」も開始し、ホームレス問題の解決に立ち向かう。推薦者のボーダレス・ジャパン代表の田口一成は、「非営利事業による限界を感じるこの分野で、インパクトを出しながら黒字経営している点は珍しい」と評する。


──貧困問題に取り組むきっかけは?

高校時代、立川駅で初めてホームレス状態の人を見たことです。高齢の女性でした。「なぜ?」と、自分も高校生だし、物やお金を差し出すこともできず悔しかった。その時初めて貧困のリアルに触れて衝撃を受けました。

──社会起業家を志したのはなぜでしょう?

国際協力を経験するうちに、単なる支援ではなく、収益を生んで持続可能なソーシャルビジネスが必要だと考えるようになり、ボーダレス・ジャパンに入社しました。バングラデシュなどで貧困支援事業に携わり、日本を振り返るとやはり貧困問題が厳然とある。ボーダレス・ジャパンに事業相談と出資をしてもらって、現在の「就職支援」を始めました。すると、相談者は当初想定していなかった、若年層が多かった。

──なぜ若年層がホームレス状態になる?

都内のネットカフェに「仮住まい」する人は4000人以上といわれ、そこでも仕事がないと命綱である携帯電話料金が払えず、追い詰められる。車がないと生活できない地方からも若年層が職を求め電車で動ける都心に集まります。

そこで、路上生活の一歩手前にいる住所不定の人に、住む場所と安定した仕事のある企業を紹介しています。企業から人材紹介料をいただいて、会社の収益を上げています。まだ、収益と呼べるほどではありませんけどね。

──「成功」とは何でしょうか。

社会に解決すべき課題がなくなり、みんなが生きること自体に悩まなくなること、ですかね。


いちかわ・かな◎1993年、東京都生まれ。中央大学文学部卒。大学で途上国の貧困問題を調査するうちに、日本の貧困問題にも注目。ホームレス問題の解決を志し、2019年にRelightを創業する。

文=三河主門 写真=映美

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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