ビジネス

2021.11.06

情報だけでは不十分。女性の医療を再定義する「Tia」の躍進

「ティア」共同創業者のフェリシティ・ヨスト(左)とキャロリン・ウィッティ(右) 写真=TIA


ティアがシリーズAラウンドを終了して2400万ドルを調達したのは、ニューヨーク市で新型コロナウイルス対策のロックダウンが始まった日だった。

会員はすでに3000人に達していたが、当時の売上はすべて対面診療サービスによるものだった。ティアはその直後に方針を転換し、オンライン診療の場合でも、医師が診療報酬を請求できるようにした。「事業内容を改革し、オンラインでも売上を得られるようにしたわけです」とウィッティは話す。


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それと同時に、将来的にオンライン診療に限定しないことも決定した。女性対象の診療所であればなおのこと、その必要性がある(いずれにせよ、年に1度の子宮がん検診がオンラインで受診可能になることは当分ないだろう)。現在は、ティアでの診療の60%がオンラインだ(メンタルヘルスなどの一部の診療は100%オンラインで実施されている)。

ティアが低料金で医療を提供できるひとつの理由は、ミッドレベル・プロバイダー(医師の監督下で診断や治療を行える医療専門職)が中心となって診療にあたっていることだ。同社では、診療の80%をナース・プラクティショナー(診療看護師)が行っている。

さらに、ソフトウェアプラットフォームを活用して医療の連携と事務作業を自動化しているため、「通常の初期診療(プライマリケア)に比べ、診療1件あたりの料金を40%削減することができています」とウィッティは説明する。

ティアは現在、ニューヨーク市のほか、カリフォルニア州ロサンゼルス、アリゾナ州フェニックス(11月開業予定)でクリニックを運営しており、年内にはサンフランシスコでも開業する予定だ。2022年には、さらに15カ所でオープンする計画もある。現在の拡大ペースで行けば、会員数は年内に1万5000人を超えると見込まれる。目標は、2023年までに10万人を達成することだ。

ティアのユーザーには選択肢がある


成長を続けるティアは、他の医療機関と提携して共同事業も始めている。クリニックではなく病院環境のなかで、産科医療などの提供を可能にし、女性が特殊医療を受けられるようにするためだ。

2021年3月には、全米規模の非営利カトリック系医療機関コモンスピリット(CommonSpirit)と提携して、アリゾナ州にクリニックを開業すると発表した。これでティアは、病院の専門医に患者を紹介できるようになるほか、コモンスピリットの保険契約を利用することも可能となる。

とはいえ、コモンスピリットが掲げるカトリックの価値観については疑念も持たれている。コモンスピリットは、人工妊娠中絶や体外受精を実施していない。しかしコモンスピリットは、3月に提携が発表された直後に、ニュースサイト「Fast Company」に対して、「妊婦を含めたどんな患者であろうと、必要な治療を提供する」と述べている。

ウィッティは、コモンスピリットと提携しても、ティアは「医療の実践とその方法について全権を握っています」と断言する。つまり、ティアのサービスを利用する女性には選択肢があるということだ。

Define Venturesの創業者でマネージングパートナーのLynne Chou O’Keefeは、「ティアのクリニックは、どこにでもあるべきだと思います」と話す。Chou O’Keefeはティアのシード投資家で、ティアの取締役にも名を連ねている。

Chou O’Keefeはこう語る。「ティアは、思春期から更年期に至る女性に対して、真にホリスティック(全体的)な医療を、対面とオンラインの両方で提供しています。私たちは、女性のヘルスケアとは何か、さらには、それが女性たちの家族の未来にとってどういう意味を持つのかを再定義できると考えています」

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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