「感情報酬を社会基盤に」というミッションを掲げてサービスを手がけるのは、長年広告業を展開してきた「Unipos(ユニポス)」だ。
一般的に、仕事で評価されるのは「予算達成」や「新規獲得」など、事業に直結する成果であることが多い。一方で、例えば「徹夜でシステムの小さなバグを修正した」「他部署の仲間の相談にのった」「オフィスの本棚を整理した」などの貢献は、必要でありながら、本人がアピールしない限りなかなか日の目を見ることがない。
「ユニポス」は、そこに目をつけたWebサービスだ。誰かがバグを修正してくれたとき、それに気づいた仲間が、社内タイムラインに「〇〇さん対応ありがとう」というメッセージを送る。それを見た従業員が、称賛の"拍手"をする。
この一連の流れに関わった社員に、インセンティブが贈られるという具合だ。
投稿にはハッシュタグをつけることもできる。導入企業の多くは、1ポイント1円換算で「Unipos給」や「ピアボーナス給」として支給している(提供=Unipos)
こうして貢献を可視化することで、メンバーは「どんな行動が評価されるのか」を理解し、マネジメントは「部下が何をしているか」を知ることができる。社内には感謝と称賛の良い循環が生まれ、組織力が強化できるのだという。
「ユニポス」とは、企業名であり、サービス名でもある。もともとネット広告を行っていた「Fringe81」が、社内の一事業だった「ユニポス」を専業にすると決め、10月1日に社名変更をした。
サービスの立ち上げ自体は2017年10月のこと。ベンチャー企業を中心に広がり、徐々に大企業での導入も進み、21年4月には540社を突破した。5月には、クラウド名刺管理のSansanと日本政策投資銀行から38億円を調達。いずれグループ会社になることを見据えて業務提携も始まった。
「ともに上場企業ながら、ものすごいスピードで決まった」という提携の狙いは何か。Unipos CEOの田中弦と、Sansanの共同創業者であり取締役CROの富岡圭が対談でその理由を語った。
──2人の出会いは?
Sansan富岡圭(以下、富岡):共通の知り合いを介して、Sansanを創業した2007年ころに出会いました。当時、世の中ではBtoCの事業が多く 、toBサービスは儲かる見込みがないのではと、見向きもされない時代だったんです。
そんななかで法人相手の名刺管理に商機を見出したわけですが、ネット業界と言えども地味な事業というイメージを持たれた。弦さんは、ネット業界で顔の広い先輩で、新参者として“会っといた方が良い人”と紹介されました。
Unipos田中弦(以下、田中):それ以来、プライベートでも会社としても繋がりがありますよね。第一印象は、スーツで硬い人だなあと(笑)。僕はたしかTシャツ姿でした。
撮影=曽川拓哉
富岡:ネット業界はこういう感じなんだなと思いました。すかさずクラウド名刺管理サービスの営業をするとすぐに利用を決めてくれて、初期ユーザーとして今も使っていただいていますね。
田中:2年前、Sansanさんが上場した時には、お米(2合)を33個も送ってくれましたよね。お礼状やお花が届くことはありましたが、お米はびっくりしました。
富岡:初期ユーザー100社さんにお礼としてささやかな贈り物をしようと思って。感謝を“込め”ての“コメ”にかけて、送りました。