医学誌ランセットに10月27日に発表された論文によると、ブラジルの研究チームは、大半がワクチン接種を受けておらず、年齢や基礎疾患があることから重症化リスクが高いとみられる約1500人のCOVID-19感染者を対象に調査を実施した。
10日間にわたり、感染者の半数に抗うつ薬のフルボキサミン、残る半数にプラセボ(偽薬)を処方したところ、緊急治療室での治療が必要になったり、より高度な医療を提供することが可能な第三次医療機関に入院したりした人の割合は、フルボキサミンのグループで11%、プラセボのグループで16%だった。フルボキサミンは、患者の重症化リスクを32%低下させたことになる。
処方されたフルボキサミンのうち、80%を服用した患者でも、入院が必要となるリスクは低くなっていた。また、ほぼ指示されたとおりに服用していたにも関わらず、死亡した人は1人だった。
研究チームによると、フルボキサミンについては他にも小規模な調査が実施されており、COVID-19による重症化リスクを低減させる可能性があるとの結果が示されている。重症化を防ぐ具体的な理由は明らかにされていないが、抗炎症作用があるためと考えられている。
米国立衛生研究所によると、米国ではフルボキサミンは、強迫性障害の治療薬として承認されており、うつ病の治療に使用されることもある。だが、食品医薬品局(FDA)は、感染症の治療薬としての承認はしていない。
さらに研究が必要
リオ・グランデ・ド・スル連邦大学のOtavio Berwanger教授は新たに発表された研究結果について、ランセット誌への寄稿の中で、「フルボキサミンが効果的で安全、安価、そして忍容性が比較的高い(副作用が比較的軽い)選択肢となることを強く示唆するものだ」と述べている。