そんな中、この分野の競合が特定分野で最高のソリューションを目指しているのとは対照的に、ClickUpは何でも屋になることを目指している。
「我々は、1つの製品の中に10個以上の異なるツールを盛り込んでいる」とエヴァンスはは話す。ClickUpのソフトウェアは、プロジェクトマネジメントやドキュメントコラボレーション、時間管理などの機能を備えている。また、チームチャット機能の提供によって、Slackが独占的シェアを握る市場にもリーチしている。
「ClickUpのようなアプローチは見たことがない」と、今回のラウンドで初めて同社に出資したLightspeedのパートナー、Arsham Memarzadehは話す。Memarzadehは、ClickUpの顧客の多くが少なくとも3つの機能を頻繁に活用していることに感心したという。エヴァンスによると、会社の設立当初に思い描いた製品ビジョンの75%は既に実現できており、残りの機能も間もなくリリースできるという。
エヴァンスは、ClickUpの売上高を明らかにしていないが、ユーザー数は無料版と有料版を合わせて400万人という。個人ユーザーは無料で利用できるが、法人ユーザーはチームの規模に応じて一定の金額を定期的に支払う。
マクドナルドやMLB球団も利用
有料顧客8万5000社の大半は中小企業だが、マクドナルドやジンガ、米メジャーリーグのサンディエゴ・パドレスなどの大手もClickUpを導入している。Memarzadehによると、ClickUpのNRR(net retention rate、売上継続率)は、生産性ソフトの中では類を見ない高さだという。
「知識労働者向け生産性ソフトは、ロングテールな製品が非常に多く、攻略が難しい市場だが、ClickUpはそれを成し遂げつつある」とアンドリーセン・ホロウィッツのゼネラル・パートナーであるデイヴィッド・ジョージは話す。
しかし、ClickUpが長期的に大きなシェアを獲得するためには、個々の機能を競合製品と同等以上に磨き上げることが必要で、エヴァンスによると、同社はそれを実現するために新たな調達を行ったという。海外展開にも力を入れるClickUpは、ダブリンとシドニーに事務所を開設し、今後3年間で800名を欧州とオーストラリアで採用する予定だ。わずか16ヶ月間で5億3500万ドルを調達した同社の勢いは、止まるところを知らない。
創業4年のClickUpは、IPOまでに必要な資金を確保できたようだ。「新たな資金調達は考えていない。我々のゴールは会社を上場させることだ」とエヴァンスは語った。