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2021.11.02 08:00

「モンハン化」で狩猟現場を変える 元デザイナーのジビエ産業改革

ファント代表 高野沙月

街を疾走し人を襲う熊、樹木の食害や土砂崩れの原因となる鹿、農作物を食べ散らかす猪など有害鳥獣は、日本全国の人々を慢性的に悩ませる存在だ。

問題解決の一端を握るのは、狩猟の専門技術を保有するハンターたち。その数はここ数年で微増しているが、旧態依然の業界体質ゆえに課題が散在している。

一方、巷ではジビエブームが定着して久しい。野生鳥獣が持つ高たんぱく・低カロリーな肉の性質は健康&筋トレブームとも合致し、需要は増加傾向にある。ただ法規制やサプライチェーンに課題があり、その流通は円滑とは言い難い。

目の当たりにしたレガシーな体質


北海道・音更町に拠点を構えるFant(ファント)は、ハンター界隈に根付く古い体質のアップデートと、スムーズなジビエ肉の流通を目指すスタートアップだ。

「依頼主からのクエストをクリアしてハンターが報酬を得る。そんなモンスターハンターのような世界を生み出したいんです」

代表の高野沙月は、ファントの目指す姿をそう表現する。ビジョンが意味するものとは何か。

高野がファントを設立したのは2019年。東京でデザイナーとして働いていた頃に食べたジビエ料理のおいしさに感動した。ジビエを多くの人に届けたいとの思いから、自らハンターになることを志し、生まれ故郷である北海道にUターンすることを決意。

しかし活動を始めると、狩猟産業に根強く残るレガシーな体質を目の当たりにする。

「技術継承や狩場など情報共有は、狩猟者の集まる猟友会や、個々人の徒弟など、アナログな人間関係のなかで共有されていました。年配ハンターは優れた技術を持っていますが、どう共有すべきか分からない、あるいは相性の良い新参ハンターにだけ教えるケースが少なくありません。そこで、ハンターたちが誰でも情報を自由に共有でき、いつでもアクセスできる『Fant』というプラットフォームを立ち上げました」


ファントのタイムライン
fantのタイムライン(公式サイトからキャプチャ)
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文=河鐘基(Forbes JAPAN オフィシャルコラムニスト) 編集=露原直人

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