問題解決の一端を握るのは、狩猟の専門技術を保有するハンターたち。その数はここ数年で微増しているが、旧態依然の業界体質ゆえに課題が散在している。
一方、巷ではジビエブームが定着して久しい。野生鳥獣が持つ高たんぱく・低カロリーな肉の性質は健康&筋トレブームとも合致し、需要は増加傾向にある。ただ法規制やサプライチェーンに課題があり、その流通は円滑とは言い難い。
目の当たりにしたレガシーな体質
北海道・音更町に拠点を構えるFant(ファント)は、ハンター界隈に根付く古い体質のアップデートと、スムーズなジビエ肉の流通を目指すスタートアップだ。
「依頼主からのクエストをクリアしてハンターが報酬を得る。そんなモンスターハンターのような世界を生み出したいんです」
代表の高野沙月は、ファントの目指す姿をそう表現する。ビジョンが意味するものとは何か。
高野がファントを設立したのは2019年。東京でデザイナーとして働いていた頃に食べたジビエ料理のおいしさに感動した。ジビエを多くの人に届けたいとの思いから、自らハンターになることを志し、生まれ故郷である北海道にUターンすることを決意。
しかし活動を始めると、狩猟産業に根強く残るレガシーな体質を目の当たりにする。
「技術継承や狩場など情報共有は、狩猟者の集まる猟友会や、個々人の徒弟など、アナログな人間関係のなかで共有されていました。年配ハンターは優れた技術を持っていますが、どう共有すべきか分からない、あるいは相性の良い新参ハンターにだけ教えるケースが少なくありません。そこで、ハンターたちが誰でも情報を自由に共有でき、いつでもアクセスできる『Fant』というプラットフォームを立ち上げました」
fantのタイムライン(公式サイトからキャプチャ)