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インターブランドジャパン 代表取締役社長兼CEO 並木将仁

毎年、グローバルブランドの価値をランキングで評価する“Best Global Brands”で知られるブランディング専門会社「インターブランド」。その日本法人としての「インターブランドジャパン」を率いる並木将仁代表取締役社長兼CEOは、自身のブランディングにも一役買っているというスペシャルな趣味をもつ。Forbes JAPAN SALON会員でもある彼に、そのスペシャルな趣味の魅力を伺った。


人と会うことで自分を磨く


──まず、御社について、自己紹介も兼ねてお話し願えますか。

並木:インターブランドは1974年にロンドンで創設されて以来、世界をリードするブランディング専門会社として実績を重ねてきました。日本法人はロンドン、ニューヨークに次ぐ第3の拠点として設立されており、ブランドをつくって価値評価をするというのを主軸に、ブランディングの手法を使ってさまざまな事業課題解決に取り組んでいます。

もう一つ、オンラインコミュニティ運営や顧客との共創ワークショップなどを通じて経営に顧客視点を組み込むための支援を行うカスタマーエージェンシー「C Space」の事業もあり、いわば2本立てでビジネスを展開しています。

──具体的にはどのような案件を手掛けられてきましたか?

並木:有名なものでいうと、例えば「Wi-Fi」という名称の開発は当社がやりました。正式な技術名称は「IEEE802.11」というのですが、「アイトリプルイー ハチマルニ テン イチイチ」といっても誰も理解できないし覚えられないですよね? それを「Wi-Fi」にしてあげることで、誰もが話したくなり、使いたくなる。技術ブランドとしては、かなり確立したのではないかと思っています。より経営の根幹に関わる仕事としては、ヤマハ発動機への「全社的ブランド価値経営実現の経営層支援」実績もあります。

最近でいうと、ガンバ大阪やイタリアのユベントス、日本スケート連盟、日本オリンピック委員会(JOC)のリブランディングも手掛けました。企業でいえば、東芝メモリが社名を「キオクシア」に変えましたが、そのリブランディングにも携わっています。



──そしてインターブランドといえば、ブランド価値を評価するブランドランキングで有名ですよね?

並木:ありがとうございます。2021年度版のグローバルランキングが発表されました。無形資産であるブランド価値を、当社独自の計算手法によって毎年算定しているのですが、株価をも左右する評価基軸として世界中で高く評価されています。

──「C Space」についても、詳しくお話しいただけますか?

並木:顧客を知る、共創する、理解を深めるというカスタマーインサイトをクライアントのビジネスに組み込み、顧客中心経営を実現するための事業です。特徴はオンラインコミュニティというプラットフォームで構築できる長く深い人間関係を基盤とした、ビッグデータで見えてくる何がだけではなく、「なぜ」何が起きているのかを深く読み解くことをもって為すインサイトです。これを「Why Behind What」というのですが、それに基づいて、ステークホルダーと一緒にブランドでも商品でもサービスでも用意することで、意味があるものをつくりましょうという共創の手法を取り入れています。また、社内での理解も不可欠なので、顧客中心主義を経営として実現するというのがざっくりとした説明でしょうか。

──そうした事業があるなかで、並木社長ご自身はどのように働いていらっしゃるのですか?

並木:業態的に顧客と会わなくなったらダメだと思うんです。顧客と会う時間が半分、あとは社内で業務にあたる時間が半分というのを目指しています。

でもまだ、実際には社外3:社内7ぐらいでしょうか。社長がいなくても組織が回るようにしたいので、組織力をどう高めるかが当面の課題です。その分、マインドリセットにも繋がるし、なるべく外で人と会っていたい。

会いだすと自分のインプットの質が高まるから、次に会う人ともいい関係ができるというポジティブなスパイラルに入ります。人と会うことの結果でアウトプットのクオリティも上がってくるので、会うことがより楽しくなってきます。いい人に会うと、自分にも自信がもててくる。すると人との関わり方も変わってくる。それまで仕事で会って、会食に行ったら終わりだった人が、仕事で会って会食に行って、今度は2人でゴハンに行きましょう、となれるわけです。そうすると、会話の質が断然変わってきます。この「人と会う」という心がけが、社長になってから意識が変わったところですね。

──国際的な大企業のCEOですが、トップセールスをしっかりされていたのですね。

並木:偉い人と会っても、偉さゆえになかなか関係構築には難しいものがありますよね。自分がつまらないと向こうに興味をもってもらえないし、向こうに興味をもっていないと向こうにも興味をもってもらえない。そういうことが分かってから、自分のクオリティを上げることに対してもかなり気を遣っています。



ついでに仕事上のこだわりをいうと、いい物は美しいと思っているんです。提案書でも報告書でも、やはり会社として出すものは美しくなければいけない。クライアントのトップと話をする時も同じで、綺麗なストーリーがあるとか、綺麗な構造化ができるとか、そこのシャープさにもこだわっているつもりです。

──なるほど、CEOは会社を背負っているわけですから、気が抜けないですね。

並木:それから、もともと僕はコンサルティング業界にいたこともあって、自分のインサイトとポイントオブビューでクライアントを動かせてこそ、自分の価値があると思っています。インターブランドにお問い合わせいただくブランドは、インターブランドの意見が聞きたいわけで、並木の意見が聞きたくてお金を払っているわけではないんです。でもそのなかで、僕は僕の意見が価値をもつようにしたい。正しいのか正しくないのか、ロジカルに合っているのかどうかよりも、もっと踏み込んだ僕自身の意見で、サービスの質を上げていきたいと思っています。

アルゼンチンタンゴの世界チャンピオンに


──プロとしての素晴らしい気負いと覚悟を感じます。ところで並木さんは、お仕事以外でも世界を極めた趣味をおもちと聞いています。

並木:2005年に、アルゼンチンタンゴダンスAPAC大会のサロン部門チャンピオンになりました。今年からはアルゼンチンタンゴ世界選手権の実行委員長を務めています。アルゼンチンには合わせて2年ほど暮らしたこともあるんです。1回目は純粋なダンス留学。2回目は30代だったので「大学院に行く」という隠れ蓑のもとでのダンス留学でした。

──アルゼンチンタンゴの魅力を教えてください。

並木:一期一会。そのなかでエモーショナルな3分間を感じることが、タンゴの喜びなんです。基本は男性がリードして女性がフォローします。お互いに相手とのコミュニケーションに注意を払います。SPレコード時代の1940〜70年代頃に、タンゴの音楽が世界的に盛り上がりました。

3分の曲のなかで、初めての男性と女性が、片方がリードしてもう片方がフォローするというのをやるんです。そのボディランゲージのなかに、ものすごい没入感がある。それが音楽に乗って起こるから、最高に気持ちがいいんです。リードとフォローというとおり、男性がリードし女性がフォローするのですが、それは指示する/されるでもないし、動かす/動かされるでもない。ぴったりマッチすると、この上なくナチュラルなんです。そうなると、もう言葉では言い表せないようなコネクションを感じます。



日常で、そういうエモーショナルなコネクションを感じることってあまりないじゃないですか。魅力はそこです。インプロビゼーションでやるのでまさに一期一会だから、同じ人と翌日踊っても、二度と同じ関係にならない。

──なるほど、タンゴは型を覚えるのではなくてインプロビゼーションなんですね。

並木:それが面白さであり難しさです。阿吽の呼吸を知らない人と、言葉を使わずにどうやるか。

──それを極めると、ある意味「コミュニケーションの達人」になりますね。

並木:女性は、うまい男性と踊ることでいいリードを知ることができます。でも男性はリードする側なので、他人から学ぶことが難しいんです。そこでタンゴの先生にいわれて、なるほどと思ったのが「リードされる女性は、自分に自信がないと男性のリードでは踊れない」ということ。自分が迷っていると、フォローする人は当然付いてこれない。そもそも伝わらないし、伝わってもリードされたくならない。リードする側が自信をもっていないと、無理に動かそうと思っても相手は動かないわけです。動きたいようにしてあげたら動いてくれるよねとか、伝えるんじゃなくて伝わっているか、というのを感じながらやらないと、うまく踊れないというわけです。

タンゴを通じて学んだのは、自分の役割を認識すること。タンゴだと、やはり女性が表現して、男性がベースをつくるというのが綺麗な踊りだと思っているので、美しく表現してもらうためには自分はどうしたらいいのかというところを追求する。コミュニケーション、リレーションシップに関しては、たくさんの学びがありました。

──まさにCEOたるに必要なスキルですね。サロンのメンバーでも、興味をもつ人がいるかもしれませんね。

並木:一時期、社交ダンスが流行ったのもそういうことなのでしょう。タンゴのもう一つの魅力としては、音楽としても素晴らしいこと。アストル・ピアソラが有名ですね。ダンスミュージックはリズム打ちがあるのでそれに合わせて踊っていけばいいのですが、タンゴは基本メロディで踊る。でも、あのピアソラをインプロで踊るのって、すごく難しい。でも難しいからこそ、できると本当に気持ち良くて病みつきになるわけです。



──サルサはリズムに乗って体が自然に動くけれど、タンゴはメロディに乗せると。

並木:長い一つの音をどう身体で表現するか。そこに表現があるんです。タンゴの魅力は、男女のコネクションのなかから生まれるエモーションにあるんです。それをインティメートなアドリブのなかにつくり出すというのは、他には決してない感覚です。衝撃的に感動的で、一度感じる経験をすると、もうやめられません。

──さらに、仕事へのフィードバックもあると。

並木:誰もが自己表現をしたいと思っていて、そのツールを探している。経営者であれば、経営自体が自己表現になっていますが、でもそれ以外に、一個人として何かを表現するためのオポチュニティをもっていることは、すごい意味があると思います。

How to be interesting


そういう意味で、僕はタンゴに出合えて良かったと思っています。実際、タンゴの話題は偉い人と話す時に、すごいフックになるんです。前に、ユニクロのクリエイティブディレクターのジョン・ジェイと話した時に「一番重要なのはHow to be interestingだ」といわれたことがあります。他人にとって、自分がどうやってインタレスティングな存在になるかが重要だと。趣味といっても「週1回やってます」のレベルではなくて、その道のプロになれるほど極めているかどうか。そうすると、他人にとってインタレスティングになるだけでなく、何が本当に大切なのかといったことも含めて、自分にも多くの学びをもたらしてくれるんです。

──サロンでも、ぜひタンゴ会をやりたいですね。

並木:年明けに公演があります。楽団を呼んで、プロダンサーを3組ぐらい招待して、日本全国をツアーで回ります。まずは興味をもつきっかけとしても、プロのショーを観てほしい。東京公演のチケットでしたら押さえられるので、興味のある方は僕におっしゃってください。



──タンゴの本とか映画とか、お薦めはありますか?

並木:僕が始めたきっかけは友人でしたが、『タンゴ・レッスン』という映画を観てほしいですね。映画としても面白いし、踊りとしてもすごく好きです。

タンゴを踊るなら、カラフルな人生を生きていないと表現の幅が広がりません。踊りのシーンだけでなく、タンゴを取り巻く人生観や世界観としても楽しんでもらえると思います。タンゴって、ステップ以外のところのクオリティも大切なんです。

──貴重なお話をありがとうございました。最後に幾つか、センスのいい並木社長に教えてほしいことがあります。まず、ご褒美レストランはどこですか?

並木:南仏にサン・ポール・ド・ヴァンスという町があり、「アラン・ロルカ」という店に行ったことがあります。街を見晴らす景色が半端なく良くて、もう一度行きたいレストランになっています。

NYでは「イレブン・マディソン・パーク」がお気に入りです。あとは、ビルバオにある「アスルメンディ」も素晴らしい体験でした。東京では、ちょっといいことがあったりすると白金の「ロッツォシチリア」というイタリアンに行きます。あと青山の「リストランテホンダ」も大好きで、僕の中では美味しさのベンチマークです。鮨だと、西麻布の「鮨 真」も好きですね。

──音楽にも一家言ありそうですね。

並木:ジャズピアニストのミシェル・カミロをずっと追いかけています。好きが高じて一緒に食事に行きましたし、NYの自宅にも招かれました。音楽を聴いてナチュラルに泣けたのは彼が初めてでした。美しいものは尊いという価値観が、その時に自分のなかでフィックスされたんです。本当は今年も11月に来るはずだったのですが、コロナで延期になってしまって。来年にリスケされるそうなので、Forbes JAPAN SALONで一晩貸し切りにして、一緒に聴きに行きませんか?

──素敵ですね。最後に、サロンに期待したいことをお聞かせください。

並木:ブランド体験を左右する一番大きな要素は、誰がそのブランドに関与しているかだと思うんです。そういう意味では、サロンには素晴らしいメンバーが集まっていると思いますが、さらに、常に新しい人を迎える雰囲気であってほしいし、それによって新しいムーブメントがいつも何かしらあってほしい。新しい自分の興味に気付けるようなサロン活動を通して、コミュニティが深まっていくと嬉しいですね。自分も含めて、会員である経営者がどんどん魅力的になっていくといいですね。


なみき・まさひと◎戦略コンサルティングファームにて、企業戦略、事業戦略、ブランド・マーケティング、デジタル、M&Aなどにおけるコンサルティングを中心に、包括的に企業の成長を支援。特にオムニチャネル&デジタル時代における顧客体験の向上を通じたブランディング実現を強みとしたコンサルティングサービスを多数実施。その後、2015年にインターブランド参画。顧客体験をベースとしたブランド価値の向上を、ロジックとクリエイティブの融合から実現することを主眼として、クライアント支援を実践している。

Promoted by Forbes JAPAN SALON / interview & text by Shigekazu Ohno(lefthands) / photographs by Takao Ota

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