ビジネス

2021.11.01

プラットフォーム事業の「バランス」の作り方|食べチョク 秋元里奈 #1

食べチョク代表 秋元里奈 (提供=DIMENSION NOTE)


──DeNA出身の方は優秀な起業家が多い印象です。他社となにが違うのでしょうか?

2つあって、1つめは先ほど言ったように「本物の打席に立たせて貰える環境」があること。やったことがある仕事を振る方が上司としては楽だと思うのですが、成功確率50%の仕事でも任せて振ってもらえる文化があります。なので任せてもらう側も、成長せざるを得ないのです。

もう1つは「誰が言ったかではなく何を言ったか」で評価される社風。新卒1年目の意見でも、本質をとらえて説得力のあることを言っていれば、その意見は評価される。なので常に本質を考えながら、仕事をする癖が身につきました。

私も普通の会社員としてではありましたが、常に本質を考え、「本物の打席に立つ」ことで自分を成長させることができました。これは起業をしていない人にとっても共通する、素養の磨き方なのかなと思います。

プラットフォームの存在意義


──プラットフォーム事業立ち上げのポイントについてお聞かせください。

プラットフォームサービスの難しい部分は「バランス感」だと思っています。買い手に寄り過ぎても売り手に寄り過ぎてもいけない。そしてその「バランス感」が事業フェーズによって変わる。この見極めが非常に難しいのです。

例えば私達の場合、創業初期は生産者さん(売り手)集めが大変でした。ただし、生産者さんは課題が明確なので、一定の規模を超えたあとは営業をしなくても口コミで出品問い合わせが増えていきました。そうすると、今度は消費者さん(買い手)集めに課題が出てきます。

プラットフォームサービスの運営はこの「バランス」を行ったり来たりするわけですが、自分たちのプラットフォームに合ったベストの立ち位置がどこなのかを常に見定めるのが重要で、そのお作法を自己流にカスタマイズしていくのです。

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食べチョク代表 秋元里奈 (提供=DIMENSION NOTE)

──食べチョクならではのカスタマイズはどのあたりにあるのでしょうか?

例えば私たちの場合、生産者さんと消費者さんの間で大きなギャップがあります。多くの生産者さんは「手紙を商品と一緒に梱包したら喜ばれる」といったことも最初はわからないところからスタートしますが、消費者さんはいろんな通販サービスを既に使っていて、綺麗な梱包のECに慣れている。

ここに大きなギャップが存在しているわけです。

なので私たちはこの「ギャップを埋める」ことこそがプラットフォームの仕事だと定義しました。

例えば、よくあるプラットフォームはトラブル発生時に「両者で解決してください」というスタンスをとることが多いと思うのですが、我々は必ず間に入るようにしています。

また、生産者さんの出品後のフォローにもかなり力を入れています。「商品名を何にしたらいいか」「写真をどう撮ったらいいか」といったフォローにかなりのリソースを割いて対応しているのです。

私たちはこれを「おせっかいなプラットフォーム」と表現したりするのですが、食べチョクだからこそ必要とされる価値なのかなと思っています。
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文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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