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2021.11.01

VC佐俣アンリ、女性起業家への積極投資で見えてきた「新しい世界」

ANRI代表パートナー 佐俣アンリ


結婚・出産はポジティブであってほしい


ANRIでは、スタートアップ業界に対するアプローチとして、3年前から投資先の起業家に対して、結婚・出産時に「お祝い金」を出す取り組みも実施しています。僕たちが投資している起業家は真面目な方ばかりで、「まだ結果も出してないのに結婚してすみません」「妊娠してしまってすみません」と申し訳なさそうに言われてしまうのが嫌だったんです。

結婚する・しない、子どもを生む・生まないなど、人生はいろんなステージがあっていいと思うのですが、“あなた”の人生が変わっていくことを、ベンチャーキャピタリストとして肯定したいという思いがあります。

「成功して投資家にお金を返すまで、家族のステップを変化させてはいけない」というのは、おかしいですよね。誠実な起業家こそそのように考えがちで、それは投資家側にも責任があります。「お祝い金制度」を作ったことで、わたしたちが家族のステップが変化していくことを歓迎していることが伝わり、皆嬉しそうに報告してくれるようになりました。導入して良かったです。

女性だから見える社会課題、生まれる事業がある


女性起業家への積極的な投資を始めてから、わかった社会課題もたくさんあります。

例えば、ANRIが投資しているマチルダというスタートアップ。丸山由佳さんという女性CEOが2021年1月に立ち上げた会社で、都内で晩ごはんのテイクアウトカーを運営しています。共働き世帯をターゲットに、特に冷凍食品やフードデリバリーには抵抗がある人に向けて、事前予約しておけば、家庭料理をテイクアウトできるというサービスです。

統計的に東京都心部は半分以上が共働き世帯ですが、いまだに「食事を作るのは女性」という価値観の男性もいて、そのギャップに苦しんでいる人もいる。マチルダのサービスはそのギャップを埋めていける企業だと思っています。

世の中には多様な社会課題が存在していて、僕のような30代後半の男性には見えない課題も多い。その課題が見える起業家たちに投資をすることで、解決していけることは素晴らしいことだと思っています。

スタートアップは「先進的なことをやらなきゃいけない」といいつつ、起業家は依然として男性が多く、D&Iにおいてはむしろ遅れていて、取り残されがちなんですよね。世の中から「スタートアップは進んでいる」と思われたいですし、そのためにバックアップするのがベンチャーキャピタルの仕事だと思っています。
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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