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2021.11.01 08:00

VC佐俣アンリ、女性起業家への積極投資で見えてきた「新しい世界」


男女比率「95:5」という異常性


そのためにやることは2つです。まず、投資者である我々が課題を理解すること。そして、それを元にアクションすること。そのための第一歩として、ANRI4号ファンドで「全投資家のうち女性起業家比率を20%にする」と打ち立てました。

D&Iの範疇には年齢、国籍、人種、性別などたくさんありますが、一丁目一番地で手をつけなければいけないのは「ジェンダーギャップ」だと考えています。男女はおおよそ50:50で存在するはずなのに、スタートアップ界では95:5になっているという異常性があるからです。

「20%」という数字は、「マイノリティがマイノリティだと感じなくなるシェアは30%」という法則を実現するために、現実的に僕たちがコミットできるバランスを考えて出したものです。これは段階を追って上げていきます。

当然、こうした数字を掲げることにネガティブな反応もありました。同業者からは「VCはリターンを上げてナンボなんだから、数字なんか掲げていないで良い起業家に投資しろ」と言われることもありました。

ポジティブ・アクション(積極的差別解消策)が必要な理由は、自分たちの行動を律するのがすごく難しいからです。長期的な視点では、絶対にギャップを解消していく必要があることは分かるけれど、どうしても「今目の前にいる一番良い起業家への投資」が優先されてしまう。このズレを是正するために、我々は数字を掲げました。

女性起業家から“選ばれる”VCに


動き出してから約1年、活動していて気がついたことは、「我々が女性起業家を選んでない」「女性起業家たちが話に来ない」のではなくて、そもそも「女性起業家が我々を選んでいなかった」「『あの人たちに話してもわかってもらえないだろう』と思われていた」ということなんです。

現在は、女性起業家の方に「あなたたちの考えや活動に賛同しているので一緒にやりたい」と言ってもらえることが増えました。起業家にとってベンチャーキャピタルは、雑に言ってしまえば「お金がもらえたらOK」な存在なので、「考えに賛同した」などと言ってもらえることはなかなかありません。「こういうふうに僕たちは選ばれるようになったんだ」というのはすごい発見でした。

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数年前までは、女性が「女性」というジェンダーを「極端に強調する」か「ゼロにする」のどちらかでないと生きていけない時代でした。僕は今もまだ残っているこの風潮を早くなくしたい。

今50歳ぐらいの女性リーダーで、コンサルティングファームや商社など戦ってきた人と話すと、「なぜ今の女性はそんなに悩んでいるんだろう」と言われることもあります。彼女たちは、女性であることを強調するか・消すかで勝ち上がってきたのだと思いますが、それは次世代に受け継ぐべきではないと思っています。
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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