正直なところ、パワーとハンドリングは至ってカローラ。速くもないし、遅くもないハイブリッドエンジンは、このSUVにはちょうど良い加速性と言える。ハイブリッドでのEV走行はバッテリー残量によるけど、60km/h程度まではEV走行を行なっており、アクセルオフ時は非常にきめ細かく回生を行なって燃費を稼ぐ設定だ。WLTCでは26.2km/Lとなっているけど、僕が試した市街地での走行では18km/Lをマークした。
リアサスペンションは現行カローラシリーズで初のトーションビームを採用しているので、高速道では路面のジョイントのダダーんという振動を見事に吸収してくれるし、コーナーでは多少アンダーステアを感じながらも、テールがピタッとついてくるところは安定感がいい。
乗り心地は適度な硬さがあり、小さなウネリなどではサスペンションはうまく上下動を収束させる。ただ少し凸凹な路面ではリアのトーションビームは少しバタつく傾向にあり、さらに大きめの段差ではバシャとしたショックを伴った。
室内も見るだけで、「あ〜カローラ」であることはわかるけど、ドライバー前の3面のデジタルメーターは綺麗で読みやすいし、センターコンソール上の大きめのタッチスクリーンも使いやすい。室内で使われている素材もやはりファミリーユースと考えられており、長持ちするクロスなどが使われている。
ユーザーがもう一つ気に入りそうなところは、スペースだ。普通のカローラとは違い、SUVであるこのカローラクロスはヘッドルームとニールーム、そしてラゲージスペースが今までにないほど豊かだと言える。そして、特に後部席の開放感と視認性がいい。
全車には標準のACCがつき、高速道路での渋滞でも気楽に使える。車間距離を保ちつつ前車を追走し、そのタイミングも自然だし、割り込みにも適正車間で対処してくれたので、この日の長い渋滞でも随分助けられた。車線を追いかけるライントレース性では基本的に車線中央をキープする。
199万円(ガソリン車)からの価格設定も魅力的だし、走りも乗り心地もカローラ系だけど、今回のカローラクロスは今までのカローラ以上の魅力を感じた。累計5000万台以上の実力が信頼できて、へんに癖がないので、これからのSUVのスタンダードになりそうだ。
国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
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