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2021.10.30 17:00

もしも山一證券の元金融マンがサッカークラブを運営したら


無駄を徹底して排することは、ベンハムの経営哲学でもある。クラブにはアカデミー制度があり、若手を育成するのだが、ほかのクラブからの引き抜きが横行していた。だから、ベンハムはすっぱりと廃止した。その代わりにBチームをつくった。Bチームとは、ほかのクラブに20歳前後になるまで育ててもらって、優秀な選手だけを安価で引き抜くというやり方だ。一例を挙げれば、RBライプツィヒから獲得したマッズ・ビストルップ(ミッティランに移籍)がそれに該当する。


1904年以来、ブレントフォードの本拠地となっているグリフィンパークのスタジアム。

ベンハムの手法はギャンブルや株式投資そのものと言える。凡人と違いがあるとすれば、買ったものが化けるその確実性だろう。だが、率直なところ、ブレントフォードの驚くべき選手獲得術のシステムは、厳密にはわかっていない。

ベンハムは人前に出ようとしないことで有名だし、ブレントフォードの戦略も秘匿されている。私たちが知ることの大半は末端の断片的な情報に過ぎず、そのシステムは謎に包まれている。

1つだけ誰の目にも明らかなのは、システムの有効性である。

ベンハムが買収して以来、ブレントフォードはイングランドの4部リーグからトップリーグまで登り詰めた。5年間でチャンピオンシップに参入し、さらに7年かけてプレミアリーグに到達した。その間に昇格プレーオフで3回はね返されたが、ほぼ10年で目標をかなえたことになる。

サッカークラブ経営における大局


激情はイングランドサッカーの美を生み出すものではあるが、クラブの経営戦略の観点から見れば、信じられないほど役に立たない。情熱に突き動かされるこのスポーツにあって、オーナーがそれにとらわれ、賢明ではない選択をしてしまう例はいくらでもある。

その誘惑がどれほど強烈なものかは、ネットフリックスのドキュメンタリーシリーズ『サンダーランドこそ我が人生』に登場したサンダーランドの元オーナー、スチュワート・ドナルドの暴走ぶりを見ればわかるだろう。移籍期限の最終日に、彼は流れ者のストライカーのウィル・グリッグを獲得しようとして法外な移籍金を支払った。
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文=ザック・ガーナー=パーキス 写真=キャサリン・アイヴィル 翻訳=町田敦夫 編集=石橋俊澄

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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